Yeah!Yeah!Yeah!
マイクロソフトの
古川会長がやってきた。

15

糸井 古川さん自身の、これから先の個人としての
夢とか設計ってあるんですか?
古川 個人?
糸井 うん。「ぜーんぶ、辞めて、ハワイで暮らす」でも
なんでもいいんだけれど。
古川 うーん……。あのね、
「鉄道を買わないか」
って言われているんですよ。
糸井 えっ!?(笑) ど、どこの?
古川 ロッキー山脈の。
秘書 その鉄道、赤字なんですって。
古川 そのままだと廃線になっちゃうんだって。
それこそ絵本に出てきそうな、昔がんばった機関車が、
退役してそのまま、もう火も入らないまま30年、
公園の片隅に置いてあります、って。
それを、地元の人達がもう一度、
ボイラー試験なんかはちゃんとして、補修して、
昔走ってた山でもう一回、煙出しながら走ってほしいね、
という運動をしているんです。
ボイラー試験やるところまでは、去年、
すこし進歩したんだけど、
走らせる場所が国立公園に指定されたから、
一度線路をはがしちゃうと二度と線路をひくことが
許可は得られそうにない。それを保存するためには、
永代使用権として、鉄道の権利を誰かが
買わなきゃならない。
糸井 大きいですねえ。小さくないですね。
弥次馬としては、買って欲しいな。
古川 五島さんとか、堤さんとかがね、東急とか
西武鉄道持ってるとかというのと同じように、
ボクもひとつ、鉄道持ってみたいなあ。
秘書 でも、儲からないもの、絶対に!
糸井 鉄道っていう物体そのものは、それだけだけど、
前後をつなげたら、儲かるかもしれないですよね。
古川 その地域の観光のため、とかね。
それから、若い子たちが都会に出ずに、
学校で鉄道の保守の仕方とか、旋盤の回し方とか、
工具の使い方とか実習をやってる。
そういう若い子たちが、都会に出なくても就職する場が
ある、とかね、その地域の観光収入とすると、
別にお土産の饅頭つくってるばっかりじゃなくて、
いきなり全部開拓してしまってアミューズメントパークを
つくって映画館をつくればいいって話じゃなくって、
自然の中で、こう、その地域って温泉も出るし……、
糸井 ロッキー山脈の近くで温泉。いいなあ。
おさる、なんかも乗せたいねー。
古川 ロッキー山脈ってサルいるのかな?
糸井 動物は、からめたいなあ!
古川 クマでしょう。
糸井 クマといえば、角砂糖ですね。
角砂糖工場をつくって……(笑)。
古川 クマがつかまらなかったら、私が替わりに。
糸井 (笑)じゃあ、実現する可能性、あるんですね!?
古川 …………うーん……。
秘書 機関車が走っているところを自分が見たいだけですよね、
きっと。
古川 人間として何か残そう、っていうのでもないし、
別に、美術館でもないしね。
明治大正の時代だったらまだしも、今この時期に
何かを残す、っていってもね。
糸井 でも、記憶に残ることを、してほしいですね。
古川 銅像をたてたい、ってわけでもないし。
犯罪おかして、新聞に名前が出たとかっていう話だったら
シャレにもならないけど。
糸井 いや、「覚えてるよ」ってこと、してほしいなあ。
せっかくだから。
古川 「バカなやつだねー」
ってこと(笑)?
糸井 そうそう(笑)。
ほら、高校時代に先生の車を立てちゃったっていう時の
写真と、ロッキーの鉄道写真が並んでて、
「古川の業績」
とかって2つ並んでたら、いいじゃないですか。
古川 そうかなあ(笑)。
糸井 古川さん、僕からの相談なんだけれども、
いま1000万人のインターネット人口って
言われてますよね。一番多く言う人で1600万人、
一番少なく言う人だと、まじめに見てるのは300万だ、
って言う人もいる。
古川さんは、どうなると読んでいるんですか?
古川 なにかのデバイス……それはキーボードがついたような
ものじゃなくて、たとえばiModeで100万台
増えるまでの加速度って、すさまじかったですよね。
@NiftyにしてもBIGLOBEにしても、
100万ユーザーを獲得するにはおそらく4、5年
かかってますよね。で、いまは300万ユーザーだとか
600万ユーザーだとかいう言い方をしているけれど、
最初の100万を獲得するまでの
スピード感っていうのは、iModeが、
過去のインターネットメディアのなかで
一番早かったかもしれない。もうすでに200万だけど。
糸井 そうなんですか。
古川 それからもう一つは、たとえばSEGAの
ドリームキャスト、売れてる売れてないっていう
話はあっても、この半年の間に、
インターネット・レディ(Ready)のデバイス、
追加で何も購入しなくても、買いさえすれば、
電話線につなげばそのまま動くデバイスが、
100万台以上配られているのは、
iModeとドリームキャストだけです。
同一機種で100万台というのは、
VAIOでも達成していないし、iMacでもないし、
ドリームキャストの台数が一番多い。
電話線につなぐためのコードまで全部入っている。
残念ながら、そのなかの15%か、20%くらいしか、
インターネットにアクセスとかしていない。
なおかつ、アクティブなユーザーというのは
その中でもまだ少ないでしょう。
これから先、今までとは違ったデバイスが接続されて、
今までのコンテンツを、コンテクストに興味ある人が
デバイスなんかなんでもいいんだ、っていう状態で
アクセスし始めた瞬間に、大化けする。
アメリカでは実際にインターネットにアクセスできる
端末で、一番安いのが99ドルですよ。
糸井 そうですか。
あのね、テープ止めてからナイスな話があるんですけど。
古川 えっ?(笑)
糸井 夢なんですよ。つまり、母数の事って、
普段は言わないけど、本当は1000万って、
ものすごく少ないっていう大問題があるのに、
株も買いましょう、車も買いましょうって
言ってるとことにばらまこうとしているわけですよね。
通販だとかで。あんなことしてたらみんな
悲鳴あげておしまいになっちゃうんだけど、
みんなが普通に持っている状態にするために、
どういう努力が、コンピュータ業界の人達はできるのか、
ってことを、ほんとにまじめに考えてない!
というのが僕の意見なんです。
「20万のものどうやってばらまくんだよ?」って。
「ほんとは5万でほしいな。5万でも高いくらいだな」
それを、どうばらまくかっていう方法を考えたんですよ。
「つくってさえくれれば、ばらまけるな」
っていう方法があるんです。
古川 そのヒントもいただきたいんだけれど、
先に、インターネット用のデバイスの普及を
別の方法で始めちゃったのは、大阪有線さん。
売り方は、有線でインターネットを引く機械って
やっぱり箱の価格5万5000円なんかで
買わないでしょう? まだ高い。
アメリカなんかでは2万円くらいだもの、同じものがね。
2万円くらいだったら、ちょっと冗談めかして
買っちゃってもいいし、もう一段と安いバージョンは
99ドルだから、1万2000円とかそのくらいでしょう。
それでインターネットが始められるっていうなら、
買って後悔はしない、っていうレンジ。
でも別の視点で考えれば、1万円だろうが2万円だろうが
5万円だろうが、物を買うときは、
値段を他のものと比べますよね。
「ちょっと周りを見渡してみると、こういうものが
そこそこの値段で買えるとき、1万円でも2万円でも
やっぱり高いですよ」って言われたときに、
有線が始めた方法というのは、月額の契約料を、
今までは2000円でやってたところを、
3500円にしてデバイスをタダで置いていく。
そういうやり方を始めたんですね。
その代わり24ヶ月使ってくれたら箱はタダ。
それで急に台数が増えた。
コンテンツとして有線放送の定期購読を2年間した人には
インターネットに接続できる箱を
タダで置いていきましょう、と。
糸井 富山の薬、ですね。
古川 そうそう。パソコンでもそれをやろうとして、
でもパソコンの場合は値段が10万円以上だから、
登録してもらった人間1万人集めてお金だけ取って
そのままトンズラするような会社も増えていてね。
無償のパソコン、というのは、じつは、
お金を回収して逃げちゃう、というカラクリに
使われたりね。今度は、逆に、まじめにやろうと
している人は、利益が出なくて失業しちゃったり。
パソコンの価格をどうしたらいいか、
というアイデアは、ぜひ、いただきたいですね。
糸井 早い話が、価格の問題もさることながら、
販売チャンネルが、プル型なんですよね。
それが問題なんだろうな、と思っているんです。
だから、流通チャンネルがあるところを、
みんなコンビニコンビニって言ってるけれど、
コンビニ以外に流通チャンネルはどこにあるんだ?
っていうのを、まじめに探す、っていうことから
始めるんですよ。それ、僕の考えでは、あるんですよ。
要するに、あらゆるシステムはすべてメディアに
なるはずだから、たとえばパチンコ屋っていうのが
2万軒弱あるんだけれど、この2万軒は、
メディアとして全く機能していないですね。
パチンコ屋さんというのは、景品を置く場所を、
何平米のうち何平米、とらなきゃいけないっていう
規制があるんですよ。
実際は、9割が換金しているんですよ。
だから、安全カミソリを置く場所さえあれば、
パチンコ屋って、あと全部、台を入れられるのに、
法規制で、ぬいぐるみを置いているわけです。
頑張る会社は、ナイキの靴を、みんなが買えないときに
置いてあるとか。あれを置いてある場所っていうのは、
法で決まっている以上、
メディアに使えるんじゃないのかなあ。
それで、たとえば2万軒増える、とか、
そういう発想で考えると……あるんですよ、
すでに、もう、人に物を売ったり、
サービスしたりするチャンネルっていうのが。
日本中に、何層にも分かれてあるんですよ。
そのうちの、どことどう組んで、あるいは全部を束ねて、
おばあちゃん、おじいちゃん、子供に、
ちゃんと届けられるかどうか、っていう問題が
いちばん大きいんじゃないか。

(つづく)

1999-12-01-WED

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