Yeah!Yeah!Yeah!
マイクロソフトの
古川会長がやってきた。

5

意外に、Macのファンから「おもしろかった」とか、
言われるんですよ、この連載。
不思議でもなんでもないんですね、
要は、「個人の使うコンピュータ」が好き、
というところでは、連帯感とか仲間意識があるんですね。

前回までより、今回は読みやすいというか、
すいすい読めるはずですから、
ご家庭で、お会社で、
ごゆっくりお読みくださいませね。


糸井: インターネットで、ちょっと
ひっかかっていることがあるんです。
インターネット上の原稿や会話というのは、
ほんとうにユーモアがないんですよ。
たとえば、退屈な日常を送っていると思っている人の
ホームページというのは、
妙に、「退屈だ」ということを強調しますよね。
「とるにたらないページですが」とか、
そう言っていること自体が、
もうすでにクソマジメだと思うんですよ。
何でもないことを堂々と言い続けてればいいのに、
「まァ誰も来ないページですし、
こういうくだらないことを言わせていただきます」
と、必ず、書いている。

じつは、これは人のページだけの話じゃなくて、
自分も同じだと気づいたんです。
インターネットには、そういうマジメな自分がいる。
ゆとりがない。
真剣さがないと読んでくれないので、
言いたいことを全部言っちゃう、というふうに、
つい、真剣に書いちゃうんですね。
「どっちでもいいや」って文章が、書けなくなる。
ぼくら、根っこがふざけている人間なのに、
タラリ、と真剣な汗が見えるんですよ。
すると、その汗に対し、また反応があるわけですよ。
古川 (笑)。
糸井 「糸井さんたいへんですね、倒れないですか」
とか言われると、ちょっとヒロイズムになるわけ。
俺ね、この循環、まずいなぁ、って思うんです。
じゃあ、そうじゃないページってあるだろうかって
インターネットで探して見ても、ない。
お笑い芸人さんのページですら、クソマジメなんですよ。
日記なんか読むと、
「誰々と飲んで、何々の問題について熱く語る」
とか書いてあるわけです。
まずいぜ、それは、と思う。
テレビのほうが、よっぽどふざけてるじゃないか。
これ、大問題なんですよね。
古川 星野監督はいつも怒りまくってますよ(笑)。
糸井 星野監督だってガマンして笑ってるじゃないですか(笑)。
無理な笑いをつくって。あそこまで行かないと、
インターネットは「見ても見なくてもいいや」っていう
メディアにはならないな、と思うんです。
たとえば、東芝問題が起こったときって、
ものすごくクソマジメなところで、
情報を交換しているんですね。
ぼくはあの事件については詳しくないから
どっちがいいとか言いにくいんだけれど、
あのマジメさって、息が詰まるんですよ。
もっと、世間の人どうしで「会っている」ような
会話にならないものかなあ? 東芝問題にしても、
一方は「法人代表」で、一方は「消費者代表」。
ぶつかりあって何が生まれるんだろうか、というと、
「どことどこがどう悪かった」ということを、
お互いに出し合うしかない。
そんなの、コンピュータどうしで、
AI(人工知能)で会話してれば? って言いたくなる。
人の会話が、実際には、顔つきひとつで
全く変わったりするのに、そういうものが、
見えてこないんですよ。
そんなふうに、インターネットが世知辛く見えている。
これをどうしようということが、ぼくの大問題なんです。
「ほぼ日」は、そうじゃないためにつくったのに、
俺が一番くそまじめじゃん!? って。
古川 (笑)。
糸井 古川さん笑うけどね(笑)、
ほんとにまずいと思っているんですよ。
俺、こんな人じゃないんですよ。
古川 日によって、トーンがせっぱ詰まっている
ときがありますよね。
糸井 あります。あれ、疲れているんですよ。
古川 本当に忙しいのに、でもこれもやらないと、って。
「なんで?」ってところに自分を追い込む。
ぼくも、仕事をふやすために
インターネットを続けているんじゃないかって
思うことがあります。
糸井 「そんな忙しいやつの言う事だから聞いてやろう」
という人は、確かにアテにはできるんですけれどね。
「ああ、あいつもたいへんなんだろうし、
俺も聞いてやろう」ってうなずいてくれるわけですよ。
でも、そういう姿勢の中から生まれるものって、
やっぱり「宗教」でしかないと思うんですよ。
そうなると、殉教するしかない。
俺はヤなんです、そんなの。
俺は、最終的には北島三郎のような御殿にね、
金のしゃちほこ両サイドにつけて、
儲かったものは全部俺のものにするぜ、
って高笑いしながら、違うことしてたいんですよ。
だから「皆さんのために」ってことは
ひとつもないわけです。
「面白いし、皆も役に立つじゃない?」
ってとこでやりたいのに、どこかで、
自分が世のため人のためになっているような、
そういう背負ったものを感じている。
こんなことをしてたんじゃお客さんは本当に、
わかってはくれないだろうな、と思うんです。
古川 インターネットでひとつネックになっている
ことがありますね。
入力するため、編集するための道具と、
見るための道具っていうのが、まだ同じですよね。
糸井 あ、それは大きいですね。
古川 「オーディオ装置はこうでなくちゃダメなんだ」
っていうオーディオ評論家の説教を聞きながら
音楽を楽しみたくはないですよね。
それに比べると、ラジカセだとか、ウオークマンだとか、
CDプレイヤーのポータブル型のようなものが、
実は非常に気楽に音楽そのものを楽しむことに集中できる。
それをインターネットに置き換えて考えてみると、
いまのインターネットというのは、
発信者が使う道具と、受信者が使う道具は全く同じである、
ということになってますね。
それは、受信しているときに
「構え」がいるということなんです。
テレビを見るときに「こういうポーズを取らないと
TVは見れませんよ」という条件を課せられているとか、
「本を読むときは正座して読みなさい」って、
お父さんに言われたような状態ですよ。
糸井 最悪ですよね。
古川 情報を受けとる側が楽しめて、
それに対して自分が情報を跳ね返すときって、
受信側の道具がちょっと形を変えるだけで
キー入力が出来るようになっている、
そういう形の方がいいですね。
たとえば、「ほぼ日」に、携帯電話のiMode専用に
編集されたページがあったとしますね。
「ほぼ日」のある部分がiModeで5000人、
1万人に届いています、っていうような状態をつくったら、
今までの読者とは全然違った人たちが、
それを見て楽しむことができますよね。
「お返事は1か2でボタンを押してください」
というようにすれば、彼らのやり方で
フィードバックをかけてくるでしょうし。
そういうふうに、インターネットを受信する形として、
これから先、携帯電話的なものがいいのか、
それともポケットサイズのデバイスがいいのか、
耳につけるようなデバイスがいいのか。
ひょっとしたら、ケースによってはね、
ぼくは、コンビニのコピーマシンでもいいと思う。
ボタン押したらザッザッザ、ってインターネット上の
欲しかった情報が印刷されて出てきてね。
それは、やっぱり読むときって、紙媒体で読まないと
気が済まない人って絶対にいるから。
もしセブンイレブンのコピーマシンから
「ほぼ日」が自由に印刷できる、ってなったら、
週刊誌買った帰りに、ほぼ日印刷して、という人が出る。
一部、20円とかでね。
糸井 20円、いい感じですね。
古川 インターネットにアクセスする道具っていうのは、
パソコンでもいいし、iModeでもいいし、
セブンイレブンのコピーマシンでもいいんです。
液晶表示の「何枚コピーしますか」という
メニューのなかに、「この機械で印刷できるもの」の
一覧があって、そこに「ほぼ日」がある。
「ぼくは毎日これ読まないと、寝つきが悪いんだよね」
というようなメディアであるならば、
コピーマシンからだって出しますよ。
糸井 なるほどなあ。
古川 ぼくが将来作ってみたいデバイスがあるんです。
ポケベル的なものとか携帯電話的なものに、
インターネットを見る道具としての機能と
リモコンの機能を持たせるんです。
「私はこのサイトが見たい」と思った人が、
携帯電話を持っているとしますよね。
テレビに向かって携帯電話で「出てこい」という
信号を出したら、ヒュッとテレビの画面に
そのサイトが映し出される。

たとえばどこかのホテルに泊まっているとします。
テレビで流れてくる情報を、
「これいいな、ちょっと印刷したいな」
と思ったら、部屋に据え置いてあるファクスに向かって、
「出てこい」という命令を、携帯電話で操作する。
そうすると、その情報が紙に印刷されて出てくる。
その命令も、現在のインターネットのように、
「いちいちまるいち・ドット・コム」
でもいいけれど、もっと簡単に、
「自分は、今日の更新だけが印刷したい」
って言った瞬間に、おのおの違ったデバイスが、
「ご主人様、わかりました!」と判断して、
テレビにプッと出したり、
ファクスからズズッと出てきたり、
そのコピーマシンからプリントされて出てくる。
これを見る人間のダイナミックレンジが問われるけれど。
糸井 そこなんですよ! いまのダイナミックレンジって、
やっぱり狭いんですね。10人にひとり、
いるかいないか、って。
「ほぼ日」の平均視聴時間っていうのが、
1日20分なんですよ。
この20分というのは、インターネットの世界では、
どうやら、ものすごく多いらしい。
20分読むために来てくれる人というのが、
こんなにいるということは、うちは、よそと、
味が違うんだ、と思うんです。

ただ、ぼくがその味に対してね、
お客さんの反応があると嬉しいものだから、
ついお神輿のてっぺんにのぼって、
大声出して旗ふっちゃうんですよ。
で、そんな自分がイヤなんですよ。
「今日は本当に堅いこというからさ」
っていう日に、
「くっだらねえな、今日は」
っていう日が意識しないで混じらないとダメなのに、
なんか、「みなさまのために」っていう匂いが、
自分の中にあるんです。
ちょっとサヨク入ってるんです(笑)。
これが、イヤなんですよ。
古川 壇上に立ってヤジっている「私」が、
いつのまにかみんなの歓声に躍らされている、という。
糸井 そうなっちゃ、ダメなんです。
やっぱり即時的な反応があるものって、
つい、行きたくなっちゃうから、
そうすると「熱心な人ほど、大事にしちゃう」
ってところがあるんです。
それは、気をつけているんです。
インターネット触ったことない人から、
「このページがあるんでパソコン買っちゃいました」
ていう反応があるとものすごく嬉しいんですよ。
実際に数えたらそんなには多くないだろうけれども。
でも、そういう仕事をしていると、
「宗教」になっていくに決まってるんで、
そこをなんとか避けて、ほんとにゴロ寝で見てくれて、
「“おお、これ、真剣に読もうぜ”って、
ピョン、と起きちゃった──そういう日がありました」
っていうのがメディアとしては理想ですよね。
……古川さん、デバイスの話を
しているときって、ものすごいイキイキしますね。
古川 ずっとそれを作りたくて
20年やってたようなものだから(笑)。
糸井 得意技なんですね(笑)。技術顧問に雇いたい!(笑)
古川 いろいろな機械がそれぞれデジタル化しているにも
かかわらず、それが何で連動してくれないの?
というのがありますよね。
糸井 あります。
古川 たとえばこういう対談にしても、
カセットテープやMDで録音した後に、
ワープロの原稿に落とすまでのプロセス。
やっぱり、書き起こしって……
糸井 すごく大変なんです。
古川 MDやカセットを、そのままマックやウインドウズに
つなげたら、バーッって文字が出てきて
テキストに変換してくれたらいいですよね。
変換を間違えたところだけクリックすると
次候補が出てきて修正できるとか。
1回直した言葉は、だんだん、ワープロのような
変換効率だけじゃなくて、
音声を文字として認識する効率も高まって、
何回も同じ修正をしなくていいとか、
次にまたインタビューした原稿をソフトにかけると
認識率が高まっているとか。
そういうのも、できますよね。
糸井 それに近いものはあるんですよね、もう。
古川 でもいまはやっぱり、メディアの変換に、
非常に面倒なことが起きている。
たとえば、MDやカセットのコネクタって、
似たような形状でありながら、パソコンに直接入っていく、
一対一でつなげられるものって、一切ないんですね。
パソコンにもマイク端子とかライン・イン端子とか
あるでしょう? でもそれは音声認識をするための
蛇口ではないんですね。それを使って接続したら、
60分のデータは60分かかるわけです。
そういうのは、やってられない。
入れたデータは、たとえば15秒でドンッと
高速の光で出力する端子で飛ばせる、とかね。
これから先はたぶん、そういうことが
できなくちゃいけないですね。
糸井 人間が汗水たらさなくてもいい部分を
どんどん増やしていくと、
違う部分に頭を使うようになるだろう、
という期待があるんです。
それをぼくらも望んでいるんだけれど、
頭を使わなくていいはずの機械を憶えるのに、
知らないうちに頭を使っているという(笑)。
ものすごい悪循環ですよね。
これをぶっとばしたいんですよね。
古川 たとえば2画面のテレビでも、
その両側に、おのおの自分の好きな映像を出すのって、
けっこう時間がかかりますよね。
だけど、ひょっとしたら2画面じゃなくて、
そのサイズが自由に変えられたり、
自由に配置が出来たり、
簡単にそれを操作できるようになったら、
やっぱりもう少したくさんの人が使うかもしれないし。
糸井 そういう親切心って、
「モノ」になるのに時間がかかるんですか?
古川 技術者によってはろくでもないものができますよね。
たとえば、複合商品(複数の機能がひとつの機械に
入っている商品)の話なんですけれど、
「ついついやっちゃって」というのはよくある話なんです。
昔、シャープがいろんな複合商品をつくったときに、
「組み合わせて絶対意味のないものを100個挙げよ」
とか、開発者がそういうクイズをお互いにやってね、
「便器冷蔵庫!」
「便器炊飯器!……やっぱ、ダメだな」
とか(笑)。
「便器を開けると冷えたビールが出てきました」なんてね。
糸井 そういうものを「ありがたいねえ」って言う人は、
いないですよね(笑)。

(つづく)  

1999-10-12-TUE

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