「代々木公園でみちくさ」編  今回の先生/柳生真吾さん プロフィールはこちら
名前その3 ミツバツチグリ
※冒頭に失礼します、このページ担当の山下です。
 じつは、今回の更新をしたそのあとで、
 読者のかたからこんなメールが届きました。
 「きょうのみちくさ、ミツバツチグリではなく
  ヘビイチゴの仲間なのでは?」
 えええ? と思って柳生さんに問い合わせましたら、
 「ご指摘どおりかも、そのふたつは似てるんですよ」
 えええええ?! これは調査をしないといけません。
 調査結果は後日かならずご報告いたします。
 それはそれといたしまして、
 今回の「みちくさ」をお読みください。お邪魔しました!

※調査を行いました。その結果はこちらでどうぞ!

朝からの雨は、いっこうに止む気配すらみせず。
傘をさしつつ代々木公園。
はねかえる雨水を気をつけながら、
足もとのわるい中での「みちくさ」続いています。
これがなんだか、たのしくて。
 
柳生 吉本さんは、長靴なんですね。
吉本 ええ、もう今日は覚悟してきたんで(笑)。
柳生 いいなあ、ぼくも長靴にすればよかった(笑)。
吉本 ‥‥あ、これ、これもよくみる草ですが。
柳生 ああ、かわいいでしょう?
かわいいですねー。
さて、この子はなんという名前でしょう?
 
吉本 ええと‥‥。
ミツバ? ミツバに似ています。
柳生 うん、これはですね、
ミツバツチグリっていいます。
 
ミツバツチグリ
分類/バラ科 キジムシロ属
学名/Potentilla freyniana
  開花期/4〜6月
分布/日本全国
草丈/15〜20センチ
吉本 え? ミツバ‥‥?
柳生 ツ・チ・グ・リ。
ミツバツチグリ、です。
吉本 ミツバツチグリ。
ツチグリってどういう意味でしょうね?
土の中でグリグリはえているから?(笑)
柳生 (笑)ツチグリは当て字があるくらいで、
「土」に「栗」って書くんですよ。栗はイガグリの栗。
根が茶色くて太っているんです。
だから、土の中の栗って意味なんでしょうね。
吉本 へええ〜、三葉土栗。
やっぱりこんなちっちゃな子にも、
そういうふしぎな名前がちゃんとあるんですね。
柳生 そうです。
春になると黄色くてかわいい花が咲くんですよ。
吉本 ミツバに似てるなあって思ったんですよ。
ミツバ、までは当たってました(笑)。
柳生 はい(笑)。
そうやって、吉本さんのような人が
名前をつけたんでしょうね、植物はみんな。
吉本 ミツバに似てるから、というくらいの理由で?
柳生 そう、大昔にそんなことがあったのかもしれないですよ。
 

ミツバツチグリ、ミツバツチグリ‥‥早口言葉みたいですね。
「三葉土栗」と、漢字をイメージするとおぼえやすい気がします。
春に黄色い花をつけるそうで。
ちいさなたのしみがひとつ、ふえました。

次の「みちくさ」は、明後日に。
しばし月・水・金の更新でまいります。

 
吉本由美さんの「ミツバツチグリ」
 

柳生さんが「可愛いですねー」と言いながら、
これは何て名前でしょう?
と、クイズ番組の司会者のようなニヤニヤ笑いになって
地面に顔を近づけた。
その視線の先には、ひょろひょろした茎のところどころに
小さく薄っぺらな3枚の葉をつけた草が寝転んでいる。
葉っぱは3枚合わせても10円玉くらいのサイズだから、
まだ新人(新苗)ってことだろうか。
これは見たことがあるぞと思う。
何かを思い出すぞ、ほら、あの、ほれ、
‥‥そうそうそう、ヘビイチゴ。
これはあれではあるまいか?

ウチの外庭の、近隣猫の通り道となっている荒れ地に、
3年前、突然ワッとヘビイチゴが実ったのだ。
いきなりなので驚いたが、好物でもあり、
果実は何でも食い散らすヒヨドリが見つける前にと、
5、6粒残して摘んだ。
野生で無農薬とはいえ、
猫のシッコが付着している可能性もあるので
そういえばよく洗って食べたな‥‥
ということも思い出したが、
食べると言えばこの葉っぱの形は
三つ葉のほうにより近くはないか? と思えてきた。
野生のクレソンがあるのだから
野生の三つ葉があってもおかしくはない。
だいいち、代々木公園に三つ葉が自生しているなんて、
わくわくするじゃないですか。

で、三つ葉に似てます、と言うと柳生さんはニヤッと笑って
「ミツバツチグリっていいます!」
おおっ、と喜んだものの、ツチグリって?
土をぐりぐり這うとでも?
「土栗という当て字があるくらいで、根が茶色く
 太っているんですよ。土の中の栗って意味でしょうね」
なるほど。
この草、頭にミツバと付いてはいても
三つ葉とは赤の他人で葉っぱの形が似てるってだけのこと。
普通は食べない。
が、みんな思うことは同じなんだなあ。
どうしてもミツバと付けずにはいられないんだなあ。

2008-12-08-MON
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