松本人志まじ頭。

第13回 じゃあ、これ温泉3日じゃすまないっすね

糸井 そう考えてくと、本当にわかることは、
ものすごく増えていくわけ。
たとえばお笑いの細い道に入っていく人がいるってことは、
生物の進化論だと思うんだけど。
永ちゃんにも同じこと言って喜ばれたんで
また同じこと言うんだけど、
海の中で発生した生き物が
陸に上がる理由はなかったんですよ。単純な話。
脊髄ができたって言うのも、カルシウムっていう要素が
いちばん足りなくなる可能性があるんで、
カルシウムを体内に蓄えておけばいいやっていうのが、
生物に脊髄ができた理由なんですよ。
骨格が欲しかったわけじゃなくて、
カルシウムが欲しかった。

で、脊髄ができて、骨格としていろんなことがで
きるようになった。魚も、軟体動物から魚になるに
当たってはカルシウムが増えただけなんですよ。
で、魚のままでいれば、海に全部入っているから
生きていられたのに、何で陸に上ったのよ。
理由、ないんですよ。
でも、上った側の子孫が僕らなんですよ。
人間なんですよ。海に住んでないから。
で、戻った側の子孫がクジラなんですよ。
あいつらって、友達になりそこなったやつなんですよ。
イルカとか。カバもそうか。
で、人類って言うのは、もともと、お前そっちに言ったら
バカだよ、って言われたやつの、……犬もそうだけど、
犬も猿もみんな陸にいる奴は、みんな馬鹿なんですよ。
でもそっちの可能性がないと人類はいなかったし、
今の地球を覆っている文化というのはなかったわけだ。
みんな海の中にいて、ゴキゲンって、魚で泳いでりゃ、
よかったのに。そう考えると、
「細い細い道なんですよ」って考えてる人って、
陸に上がった人なんですよ。
松本 それで矢沢さんが喜ぶのは、よくわかりますね(笑)。
糸井 俺はそれを、同じだと思うわけ。
松本 それは喜ぶし、勇気づけられる言葉ですよね。
糸井 さらに言うと、俺もそうだし、永ちゃんもそうだし、
他に「お前やめなさいっ」「よしなさいって!」
って言ってる人も、同じなんですよ、祖先は。
可能性を増やしていくために
苦労したっていう人たちの祖先。

もっとおかしいのは、
つわりの時期ってあるじゃないですか。妊婦で。
あれって、ちょうど、胎児が、陸に上る瞬間なんだって。
本ッ当に苦しかったんだと思うの、生きものとして。
その記憶が、つわりとして今も呼び覚まされる。
子宮ってさ、トポロジー的に言うと、平らなわけじゃない。
女の股に穴が空いてますけど、
あれをスーッと前に出したらば、
平らなのっぺらなものですよね。
で、そこに、羊水って言う海をすいこんで、
中にとどめたのが、子宮ですよね。
女って、平らな生きものが、中に海を抱えたわけですよ。
そこで、精子ってやつが来て、海の中に……
鮭がタマゴを産むみたいに、産み付けていって、
育った結果が俺達じゃない。
で、ここで何で陸に上がんねん!?
てのが、ほんとにもう苦しいんだよ。
このままにしといてくれーっ、って。
で、生まれたときに、呼吸だって、
オギャアっていうのだって、あれ、陸に上がったときの
最初の呼吸ですよね。
あの、呼吸しなくてよかったんだもん、彼らは。
肺に息を通すのが、最初のオギャアですよ。
そんな苦労を2度してるわけ。
産道っていう細い道を、頭の形ゆがまして通ってきて、
ていうような、ことを、わからないと、
わからないと思うの、
俺、ウンコがいい、っていうの。
松本 (笑)。
糸井 大袈裟に言うとね。
松本 そうか!
じゃあ、これ温泉3日じゃすまないっすね。
糸井 まあ、1回ダイジェストではしょって、
もう1回各論に持ってって。
松本 そうですね。
糸井 だって松本人志が坊主になったときの気持ちって、
ねらいはこうですっていうの、言えるけど、
もっとあるんですよ。
その「もっと」について、解りたいんですよね。
本人だって。
松本 そっかあ。
糸井 温泉3日、冗談じゃないって。
俺はやりたいなあ!!
松本 これは……壮大な話でしょう。
糸井 俺は、これを、ずうっと、一人でやってるのよ。
寂しいのよ、カミさんが寝てから。
松本 不安もあってね。
それで本当に3日4日5日で、
本当の答えが得られたときにね、
得られてしまったらね、
どうなるんやろ、ってのがねありますね。
糸井 ぜったい、得られない。
生きものの歴史全部抱えてるのが自分だとすれば、
全部の歴史を抱えてるんだから、
そこはしょうがないじゃないですか。
ただその中に人殺しの歴史も全部入ってるし、
泥棒の歴史も入ってるし、そんなかで、「あんねん」
って思うだけで、いいよね。

だからその吉本さんのなかでも、
校門に首を置いた犯人っているじゃないですか。
酒鬼薔薇くんっていう。
「あれ、べつに、首は、戦国時代には、
敵の首もってきたりして、首のところっていうのは、
単にちょっと歴史を守っただけで、そういうふうに
時々、現れちゃうんだよね……」ていう、
ものすごくカンタンな言い方をする。

ヨーロッパの人たちはいかにも自分たちは
進んでいるみたいに言うけれど、
今でもコソボだなんだのでメチャクチャなことやってる。
何立派ぶってんだ。
そういうことでもさ、生きものの歴史として
考えない限りはさ、
「それやっぱり考えが間違ってる!みんなが平和を祈れば」
って言うけど、そんな生きものじゃない、人間は。
もっとエゲツない生きものなんだから。
それやる奴がいて俺らがいたっていう。
それ答え出っこないよね。

敵を退治しちゃったから首を取ったわけで、
もしいつでも襲いかかってくるトラが都会にいたらさ、
もっとみんな歯が丈夫になるよね。腕力もつくし。
それ退治しちゃったおかげで、俺ら、
人同士がいじめあわないと、
その気持ちがやるせないわけですよ。
その気持ちみたいなところに、きっと笑いだって、
すっごいストレスをごまかすために、発明したんですよ、
誰かがね。

「何でトカゲのおっさんで笑えるのよ!?」みたいなさ。
面白くてしょうがないよねえ。
で、通訳のように衣装を着ているわけじゃない。
あれ、普通の格好のままで芝居できるんですよね。
それを、ふつうの格好のままだと通じっこないって
思ったから、あの衣装を着てたらおもろいで、って、
足したんだよ。
きっとあの形から始まったものじゃないですよね。
そういう構造が、わかりたいんです、俺は。
エロと笑い、っていうのは、知りたいんだなあ。
松本 そうですねえ。僕も知りたいですよ。

2000-01-12-WED

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