松本人志まじ頭。

第4回 腰はないな

糸井 でもね、ダウンタウンとしてどうなっていくか
わからないけども、何やってもいい松本人志っていう
ブランドができるのがいちばんカッコイイじゃないですか。
で、個人なんだけど、組織もうごいてる感じがするし、
今までだと芸人さんとして……、
ま、横山やすしという単独で生きてた人はいるんだけど、
あの人は単独じゃなかったら
もっといろんなことできたのに(笑)。
松本 ニホンオオカミですからね(笑)。
糸井 (笑)そう、そう、そのとおり!
だって、あきらかにすごい才能あったし、
努力もしてたし、間口もひろかったですよ。
でも、あの人、組織がひとつもないんですよね。
あの人、たぶんシナジーがないってゆーか、
つかまる力がない(笑)。
(※シナジー→共同作業、相乗作用。経営戦略で、
 販売、操業、投資管理などの機能を重層的に活用し、
 利益を生みだす効果。)
で、結局どこにシナジーがあったかというと、
ボートレースの人たちとつながったりとかさ。
松本 あー、そうですよねぇ、うーん……。
糸井 きっと、俺が釣りの人とだけつき合ってるという
状態になってるのと同じだよね。
でもね、松本はできるよ。ぜったいできるよ。
ちょっとここが下手なんだよなぁって部分は
俺なんかには見えるんだけど、
でもね、ちょうど永ちゃん見てるときと同じでね、
「それもまたいいんだよなぁ」って思っちゃうから、
困っちゃうんですよね(笑)。
松本 (笑)あの、そうなんですよ。
永ちゃんがあんだけね、あの、なんでしょう……、
綿密な計算もたてつつ、あれだけのコンサートやって
最後パシーッとキメなあかんとこで、
タオル背中かけて終わらなあかん、
スポットライトがスーッと消えていくとこで、
タオルがいかんせん逆さまやったりするんですよ(笑)。
糸井 (笑)いや、そうなのよ。
松本 でも僕は、それが好きなんですよ。
糸井 俺もそうなの。困っちゃうんだよね。
松本 「あーっ、もぉー」って思いながら、
なーんか「このオッサン!」ってなりますよね。
糸井 (笑)いちばんすごかったのが、
横浜かどっかでコンサートやったときに、
タオルを腰に巻いちゃったんだよねー。
歌いながら。
松本 (爆笑)。
糸井 客としてはさ、
「そ、それはちがう……」って思うんだけど、
もうオッケーなんだよぉ。
松本 オッケーですよ。
糸井 それは、松本のお笑いで、
「それは笑えへんで!」ってとこに行っちゃったときに、
オッケーだしちゃうんだよねぇ。
松本 そうですね。
糸井 腰にタオル巻くのはだれもマネしなかったよ。
お客さんも、さすがに。
松本 ああ、僕、それ知りませんでしたからね。
たぶん、矢沢さんも「腰はないな」と思ったんでしょうね。
1回やってみて。
ま、いろいろやってみてるんでしょうね。
糸井 ついやっちゃったんだろうね(笑)。
ごきげんでやっちゃっただけなんだろうね。
だから、同じように、松本のお笑いで……
ただ松本人志がすごいのは、
ダメってわかったときの逃げ方知ってるよね(笑)。
クリンチとか(笑)。
ゴング鳴るまで待つとか。
それは“ガキの使い”のときのコントが
すっごいじゃないですか。
名クリンチ。
松本 (笑)うん。うん。そうですね。
糸井 あれ、芸だよね。
松本 あれ、芸なんですよ。
ところがそれをわからない人たちがいてねぇ。
「松本は、こたえに困って逃げてるだけや〜」
っていうことを言う、心ない人がいるんですよ。
そーじゃないんですよね。
いかに逃げるか、っていう、いろんな逃げ方を
僕はいろいろ考えてやってるんですけどねぇ。
糸井 あのクリンチワークはやっぱりさぁ、
サラゴサ選手を見るようなさぁ(笑)。
松本 そうなんですよぉ。
もちろん絶妙なこたえがあったらそれでいきますけど、
まあ、ないときもあるから、じゃあどう逃げるか
っていうとこでね、遊んでるんですけどねぇ。
糸井 場そのものがぜんぶお笑いなんだって思ったら、
あんなに計算しつくされた芝居はないと思うんだけど、
わかられないんだよねぇ。
うち、カミさんはあれがいちばん好きみたいだよ。
役者やってる人とかは、失敗する可能性をいつも
もってるじゃないですか。
だから、ごまかすときの笑いとか好きみたいねぇ。
きれいにキマったときとかじゃなくてね。
松本 そうなんですよね。
僕なんかもそうなんですけどねぇ。
ま、きれいにキマるなら、よっぽどきれいにキマるとね、
それはそれで美しいものなんですけど。
糸井 でも、あの場からはもう出ないからね。
松本 そうですねー、そうです。
糸井 空飛ぶわけじゃないから。
松本 うーん、そう思いますねぇ。
糸井 あの小さい小さい舞台できれいにキマったって、
それだけのことだから。
だから、あのクリンチはすごいよなぁ。
あと、それを振りほどく浜ちゃんも、
あれはあれですごい芸だと思うけどねぇ。
松本 そうですねぇ。
糸井 ときどき組みつかせたりさぁ、
ときどきほどいたり……、わかってんだろうなぁ。
松本 そこ、もうちょっと笑って楽しんでほしいんですけどね。
糸井 もしそれを楽しめって言うと、
時間帯を深夜に連れていかれちゃうんだろうねぇ。
松本 だから、僕らの世界でいう“すかし”っていうねぇ。
こうもっていって、パシッと落とすと見せておいて、
こっちに逃げるというか、アラッ? といことで、
僕らは笑えるんですけど、一般の人はねぇ、
損したような気になるんですよね。
糸井 はー、そっかー。
たとえばさぁ、よくスーパーにさぁ、
クワガタムシのプラモデルのついたお菓子とか
売ってるじゃない。
たてまえはお菓子って書いてあるけど、
欲しいのはクワガタムシのプラモデルじゃない? 
松本 はいはい、そうですねぇ(笑)。
糸井 認めろぉ!(笑)
そういうことだよね。
ただね、俺がなんで希望があるって言ってるかというと、
全員がつくる立場にまわる時代になると思うんですよ。
ただサボってる人ってのは、
いなくならざるを得なくなって。
で、時間給で働く人はこっちにいます、と。
一方では、つくる苦労を知ってる人が
どんどん増えてくると思うんですよ。
僕がインターネットやっててなにがおもしろいかというと、
たとえば、シャンプーについてアンケートとると、
ネットでつながってる人たちが、
タダなんだけど一生懸命答えてくれるんですよ。
その人たちは、シャンプーはつくってないけど、
仕事でお菓子つくってたり、コンピュータつくってたり、
車つくってたり、本つくってたりしてるんです。
つまり、自分もお客さん相手に苦労してる人たちが、
シャンプーについて語ってくれるわけ。
使う立場で文句言ってるだけじゃなくて、
「このへんはきっと難しいところだけど……」って
作り手のことをわかってる人たちが、
アンケート寄せてくれるのよ。
その意見はね、ぜんぶ将来の参考になるんですよ。
で、彼らはそういうものを見つけたくて、
物を買ってるんですよね。

2000-01-03-MON

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