松本人志まじ頭。

第1回 俺がいちばんやりたいのはなんだろう?

松本 僕は、その、たけしさんがバイク事故を起こしたときに、
「けっこうヤバイ」って言われてて復活したときにねぇ、
僕は正直「勝てるな」って思いましたね……。
で、あれでもし終わると、僕はもう抜けないやろなぁって。
それはね、非常に難しいコメントですけどね(笑)、
でも、そう思いましたねぇ、本音としてはですね。
糸井 夭折した天才と同じになっちゃうからねぇ。
やっぱその加減なんじゃないかって思うよ、
昔だと、コレやったからあの人は抜けないという
年表に書きやすい事実があったりするじゃないですか。
たとえば、たけしさんで言うと、
映画で外国で賞もらったというのが記録に残るよねぇ。
でも、本人は「それじゃない」って思ってるような
気がするんだぁ。
「そーいうことじゃないんだよな」みたいな。
そうなると、これからって、年表に残るような活躍って、
書けないようなことばっかりになるよねぇ。
松本 そうですよね。
糸井 記憶に残るというか……。
今、そういう意味では、松本人志はまだなんだね?
松本 あのー、まだですねぇ。
うーん、じゃどうしたらいちばん気持ちよく、
天下泰平で(笑)いけるのか。
僕もわからないんですけど……そうですねぇ、
どうなっていくんでしょう?
糸井 僕にもわかんないんですよ。
そういうのね、1回チャラになっちゃうんじゃないかな。
辰吉は“見えないベルト”ねらってないよねぇ。
松本 ねらってないですねぇ。
糸井 でもベルトつけちゃったよねぇ。
松本 いつしかねぇ。
糸井 そのなかには、あの顔も要素としてあったり、
しゃべり方もあったり、親父の顔もあったり……、
運じゃないか、っていう気がするのよ、このごろは。
昔だと、追求してみようとか思ったんだけど、
いい歳になって考えてみるとねぇ、運かなぁ。

たとえば「松本人志、坊主!」って出るじゃないですか。
で、坊主はぜったい人が真似しないだろうな
って気分はあるわけだよ。
で、「またそういう道に行くんだからぁ」って言われる。
つまりお笑いタレントが「カッコイイ」って
言われちゃうことに対する
「それ居心地わるいな」って感じで、
「わしゃあネクタイここに入れてやる」
みたいに逆らうじゃない。
で、「えーい、坊主だ」ってときに、
「これでオマエら、カッコイイって言わないだろ」って。
そしたらまた言うじゃない。
松本 そうなんですよ。
糸井 で、その後って、俺、残酷な言い方をすると、
何やっても言われなくなくなるときってのが、
可能性としてぜったいあるわけですよねぇ。
「こんなにおもしろいのに客が少なくなってきた」と。
で、そのときに「あれ、なんなんでだろう?」っていうね。
それはみんな経験してるんですよね、
志ん生だって経験してきてるわけですよ。
で、そのときに初めて、自分のやりたいことが
本当は見えるのなかぁ。
松本 それはねぇ、たぶん当たってると思いますね。
たぶんそうなんだと思いますねぇ。
糸井 その言い方って、ある意味ですごいきついんだけど、
いちばん自分がほしいものを探すためには、
その道しかないような気がするんですよ。
たけしさんでも、刑事事件があって、
死に損ないが1回あって、
あの2回ってのはすごい財産ですよね。
「俺がいちばんやりたいのはなんだろう?」
って思うためには。
あれがなかったら、たけしさんって、
今ぜんぜんちがう場所にいたかもしれないよねぇ。
やっぱり伝説になる人ってのは“事故”がありますよね。
松本 そうなんですよね。
糸井 それって、もう自分じゃどうしようもない。
松本 うん、そうなんですよ。
いや、僕はね、べつになんや、傷害で1回くらい
捕まっても、ぜんぜんいいんですけどねぇ。
無理からやるのもこれ寒い話でねぇ(笑)。
糸井 そうだよねぇ(笑)。
松本 えー、道あるいてて、手が出るほど腹立つことも
なかなかないし。うーん、だからねぇ……。
糸井 「そんなことで……」っていう捕まり方って
イヤですよねぇ。
いっそ、急に外人部隊に入って戦争に行くとかね。
松本 そう(笑)。
糸井 そういうわけのわかんないことじゃないとね(笑)。
松本人志、外人部隊に!
松本 そうなんですよ、だから、5年くらい前かなぁ、
僕はミスタードーナツでバイトするって言ったんですよ。
すばらしい意見でしょ(笑)。
糸井 それ知ってた。すばらしいと思った。
松本 そうでしょ(笑)。
でもね、これがなかなか……。
糸井 理解されない?
松本 ちょっとねぇ……。
糸井 今だったらホントはできるから、
やるって方法もあるんだよね。
でも、迷惑かけるんだよね。
松本 迷惑かけるんです。そうなんです。
糸井 俺、ジャニーズ系の子はみんな1年休めばいいと思うもの。
会社員やればいいと思うもの。
で、1年「アイツV6なんだよ」って言われながら、
営業マンやって、またステージで踊ったら、強いよぉ。
松本 (笑)そうですね。
糸井 強いよぉ、だってインプットがちがうもの。
松本 なんーにもそんな経験なしに入ってきてますからねぇ。
糸井 俺、ミスタードーナツねたはね、
ものすごく好きなの(笑)。
松本 (笑)。
糸井 同じこと思ってたんですよ。
俺ね、実は1回よその会社に入れてくれないかなって
言ったことあるのよ。で、今の仕事も続けるけど、
週に何回か呼ばれてもいいから、月給5万円くらいで、
社外社員として雇ってくれって言ったんだけど、
「それはいいですね、わっはっは」って言われて
終わっちゃうんですよね。
松本 僕もそのときは半分以上マジで思ってたんですけどね。
明日休みかぁ、じゃあちょっと面接行ってみようかな、
と思ったときにね(笑)、やっぱり足すくみますよね。
たいへんやなぁ、って思いますよね。
糸井 そうか、面接って言葉までは出てきたんだ。
松本 出てきましたね。
で、さあ、なに店に行こうかと(笑)。
そこの店長になんて言おうかなぁって。
糸井 そうか、本気になると足すくむんだね。
ギャグじゃなかったからおもしろかったんだね。
松本 で、今は、あれです。
全財産をユニセフに寄付する(笑)のを、
何年か前から思ってて……これはどうですか?
これもかなり足すくむんですよ。
糸井 そうだよね。できることだからね。
どのくらい残しておくかっていうのが、
ものすごいクイズになるね。
松本 できるんですよ。
で、本当はね、アパートに住んで、車も携帯もやめて、
近所の銭湯行く生活をして、
で、スタジオ往復できたらすごいんですけどねぇ。

1999-12-31-FRI

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