ほぼ日刊イトイ新聞

マンガでドミノ

今週のマンガ
『異国迷路のクロワーゼ』
『異国迷路のクロワーゼ』

著者:武田日向
発行:富士見書房

誰かといっしょにいることつながりで、
『異国迷路のクロワーゼ』を推します。
一見、いわゆる萌え系マンガにも見えますが、
ところがどっこい、本格少女漫画にも決してひけをとらない
繊細でせつない、そして優しいマンガです。

舞台は19世紀、パリ。
長崎の大店の娘・湯音(ユネ)は、
丁稚奉公として パリの古いアーケード街
「ギャルリ・ド・ロア」の鉄工芸店で働くことになります。
鉄工芸店の店主・青年クロードは、
若くして事故で亡くなった父の後をついで、
新しくできた大型デパートにお客をとられながらも、
必死にお店を守っています。

ジャポニズムが流行する当時の
パリの文化、習慣、雰囲気、
生活形態など調べられており、
当時の日本文化とも比較され、なかなか興味深い。
町並みや建物、人々、雑貨も書き込まれていて、
フリルにレースにドレスに貴婦人と、
絵を見ているだけでも楽しい!

なんといっても魅力的なのは、
ユネとクロードのドラマです。
言葉もろくに通じないパリの街で一人、
様々な事件に巻き込まれながらも、
滅私奉公の言葉そのもののように、
ただただ、健気に街に溶け込もうとするユネ。
真面目で頑迷なうえ、店主の責任に押しつぶされて
心を閉ざしていたクロードが、
彼女の誠意に少しずつ心を開いて、
気持ちを通わせていく様子が、
真剣で、一生懸命で、傷だらけで、
思わず泣いてしまいました。

おそらくですが、2人の間にあるものは、
恋愛というよりは家族愛であり、人間愛。
もっといえば、日本とパリという
文化同士の愛情、歩み寄り……。
そんな日仏の心の逢瀬を感じさせてくれるマンガです。

(こにゃ)

2014-02-08-SAT