ライフ・イズ・マジック

人生はマジックだ、なんて言い方そのものが怪しいでしょ。
ひょっとしたら、マジックってのは、
宗教の種かもしれないし、驚きの商品化かもしれないし、
人類最古の情報産業だったりもして。

軽い笑いもとれるし、ちょっと好かれたり嫌われたり、
ひとつの国をまるごとだまし取るようなこともできる。
いま、マジックを考えたり感じたりするのは、
なんだかとても大事な気がするんですよ。

おおげさな紹介はよしましょう。
マジック・ナポレオンズのパルト小石さんです。どうぞ!

ナポレオンズのHPは
http://www.tvland.co.jp/napoleons/
e-mail:napoleons@tvland.co.jp

再入院、そして再退院

退院して2回目の通院日がやってきた。
1回目の診察結果は、

「良いですねぇ。
 退院時よりも
 すべてのデータが良くなってますよ」

だったが、今回はどうだろう。
最近、食欲が落ちたし、お腹の調子もイマイチ。

だが仕方ない、まずは採血に向かう。
10分くらいで採血終了、
あとは主治医の診療を待つのみ。

意外と早く、主治医の診察を受けることができた。
主治医は採血の結果を眺め、

「脱水症状と腎臓の値が悪くなっていますねぇ。
 小石さん、今から入院して
 すぐに治療を始めませんか?」

退院前に主治医から聞いた話を思い出した。

「みんな入院治療を嫌がって、家でしっかり養生します、
 なんて言うんですが、結果、救急車で搬送され、
 長期入院することになるんですよ。

 早いうちにさっさと入院、治療すれば、
 短い期間ですぐに退院できますよ」

私はなんの準備もしていないけれど、
すぐに入院することにした。

今回は、これまでに入院していたフロアーとは
別の階であった。

看護師さんたちも、初めての人ばかり。
中には、夜中に見回りに来る度、パチンと電気を点け、
「小石さん、点滴のチェックしますね」
と、明るく元気な声で入ってくる看護師さんもいる。

普通は、懐中電灯を点け、音も出さず、
気づいたら枕元に白いシルエットのように佇み、
無言で点滴液の減り具合をチェックする
看護師さんばかり。

それはそれで怖く感じることもあったが、夜中に、
「小石さ〜ん」
と明るく声をかけられるのも、滅多にない経験であった。

夜中に起こされ、天井眺めて考える。

これまで一度も大病しなかった私が、
67歳になって初めての大病、急性白血病。

「原因は未だ不明で、何か悪いことをしたから、
 というわけではありません」
と聞いてはいるものの、
夜中になると来し方を反省してしまう。

「母親の死に目にも会えなかった。
 ずっと親不孝だった。
 母がお灸をすえたのだろうか?」

「仕事とはいえ、
 周りの人に無理難題を吹っかけ過ぎて、
 多くの人の恨みを買ったのかもしれない」

しかし、おいらの100倍は悪いことしてきた人が、
変わらず元気で遊び歩いているのは
おかしいじゃないか。

などなど、反省から恨み言まで、
隠していた黒い思いを一気に吐き出すという、
虚しい一夜。

翌朝、テレビを観ると、同じ急性白血病を克服、
水泳競技で4冠達成した女性アスリートがいた。

夜中、あれほど落ち込んだ気分はたちまち晴れ、

「そうだよ、やっぱりこの病気になったからといって
 反省する必要なんてないんだよ、
 おいらもゆっくり復活を目指せば良いんだよ、
 あははは」

彼女も復活まで1年以上かかったというから、
おいらもゆっくりじっくり復帰を目指すとしよう。

彼女は伸び盛りの20歳、おいらは衰え始めの68歳、
という違いには目をつぶって、リハビリに専念するのだ。

点滴と投薬のおかげで、1週間だけの入院で済んだ。
主治医の言うことを聞いて良かった。

朝9時には手続き、支払いを済ませ、
2度目の退院となった。

主治医からは、

「カロリー高めの食事を心がけて。
 甘いデザートなんかもOK、
 水分補給も充分にお願いします。

 デザートはカロリー高めで消化吸収が良く、
 だから太るんですけど、小石さんの場合、
 まだまだ余裕たっぷりですから」

その後は、3度3度の食事のあと、
プリンやケーキなどを食べることにした。

『デザートは別腹』という言葉を、
生まれて初めて実感できたかもしれない。

 


明るく軽く親切なのに。
ほんの少し悲しみの味がするのだ。
マジックというのが、もともとそういう
素性のものなのだろうか。ー

糸井重里(帯コピーより)

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「ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と」

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