ライフ・イズ・マジック

人生はマジックだ、なんて言い方そのものが怪しいでしょ。
ひょっとしたら、マジックってのは、
宗教の種かもしれないし、驚きの商品化かもしれないし、
人類最古の情報産業だったりもして。

軽い笑いもとれるし、ちょっと好かれたり嫌われたり、
ひとつの国をまるごとだまし取るようなこともできる。
いま、マジックを考えたり感じたりするのは、
なんだかとても大事な気がするんですよ。

おおげさな紹介はよしましょう。
マジック・ナポレオンズのパルト小石さんです。どうぞ!

ナポレオンズのHPは
http://www.tvland.co.jp/napoleons/
e-mail:napoleons@tvland.co.jp

新・ナポレオンズ小石の無菌室日記5

『我が愛しの高級スーツ』

世界が平穏を取り戻したら、
再びあの高級スーツ売り場を冷やかしたい!
もう、今から楽しみでならない。

エスカレーターを降りると、
我が愛しのイタリア製高級スーツ売り場が
正面に!

店員さんが丁寧にブラシをかけている。
今日も、お客さんの姿はどこにも見えない。

遠くから様子を伺うだけで、
見るからに本物と思わせる、独特の威圧感。

「お前に、この高級スーツの良さが
 分かるのかぁ!」

売り場のどこかから、
そんな声が聞こえてきそう。

始めはすっかりビビって、
売り場に足を踏み入れることすらできないでいた。

しかし、何度か売り場の前を
行きつ戻りつしながら、
やっとこさ勇気を振り絞って
売り場の前まで歩を進めることができたのだ。

売り場の前に立っても、店員さんに、
「いらっしゃいませ〜」
なんて声をかけられることはない。

店員さんは、ただ静かに微笑んでいる。
「あなたに似合うスーツが、
 はたしてここにあるのかしら?」

そう言っているように思えて足がすくむが、
なんとか意を決して店内に向かう。

私は軽く余裕の会釈をし、
ゆっくりと店内に歩を進める。

いかにも慣れているように
念願の高級スーツを手に、
スーツの手触りを楽しむ。
いやはや、その神がかったような手触り。

「いかがでしょうか?」

いかがもなにも、そりゃぁあぁた、
いつか着てみたい高級スーツ、
紳士の夢そのものではございませんか。

思わずひれ伏してしまいそうになるのを
グッと堪え、

「いいですねぇ、この感触」

ここで喜んでベラベラしゃべるのは
みっともない、ほんの二言三言。

店員さんはここで少し警戒を解いたように、

「こちらはイタリアのブランド、
 ブルネ○・クチネ○でございまして」

もちろんブランド名は知ってますよ。
だけど言い間違えそうで言えない。

以前『HAVANE(アヴェンヌ)』という名の
ブティックを『ハバネ』と思い込んでいた。

「エディアールの紅茶を買ってきて」
と頼まれ、
『HEDIARD』と書かれた店の前で、
「エディアールって店、どこですか?」

『HEDIARD』(エディアール)の店員さんに
訊いてしまった屈辱を思い出す。

ブルネ○・クチネ○、そうそう。
名前まで高級そうではないか。

「あぁ、そうかぁ、
 これが、そうだったんだね。
 へぇ、そうなんだぁ」

                (つづく)

 


明るく軽く親切なのに。
ほんの少し悲しみの味がするのだ。
マジックというのが、もともとそういう
素性のものなのだろうか。ー
糸井重里(帯コピーより)

「神様の愛したマジシャン」
著者:小石至誠
価格:1,365 円(税込)
発行:徳間書店
ISBN-13: 978-4198625429
【Amazon.co.jpはこちら】


<DVDの紹介>


『ナポリニコフの魔術学校
(カードマジック編)』

定価 3,150円(税込)
*前田知洋さんがゲストです!


<単行本の紹介>


「ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と」

定価 1,050円(税込)

関連コンテンツ

今日のおすすめコンテンツ

「ほぼ日刊イトイ新聞」をフォローする