ライフ・イズ・マジック

人生はマジックだ、なんて言い方そのものが怪しいでしょ。
ひょっとしたら、マジックってのは、
宗教の種かもしれないし、驚きの商品化かもしれないし、
人類最古の情報産業だったりもして。

軽い笑いもとれるし、ちょっと好かれたり嫌われたり、
ひとつの国をまるごとだまし取るようなこともできる。
いま、マジックを考えたり感じたりするのは、
なんだかとても大事な気がするんですよ。

おおげさな紹介はよしましょう。
マジック・ナポレオンズのパルト小石さんです。どうぞ!

ナポレオンズのHPは
http://www.tvland.co.jp/napoleons/
e-mail:napoleons@tvland.co.jp

ナポレオンズ・小石の無菌室便り6

初めての無菌室。

ドアを開けて入ると、3m長ほどの廊下。
廊下の右側にドアがひとつ、
ドアの向こう側は
シャワー室とトイレ。

廊下の突き当たりのドアを開けると、
そこが無菌室。

8畳くらいのスペースにベッド、
冷蔵庫、洗面台など。

入院後は、採血や点滴などの治療が続く日々。
合間合間の時間は何かをすることもない。
なので、すぐさま退屈病を発症。

差し入れの本を読んだり、DVDソフトを観たり。
DVDソフトは、友人が入院を知って
すぐさま送ってくれた。

昔々、ブラウン管テレビで夢中になって観た
『スパイ大作戦』、『ジェシカおばさんの事件簿』など、
いやはや懐かしい。

しばらくするとコーヒー、紅茶など
好きな時に飲めるようになった(個別包装で無糖のみ)。
これで口寂しさもまぁまぁ解消。

3度の食事の際にインスタントみそ汁、スープ、
カップ麺を付けることも許されるようになった。
なんだか営業先の昼飯のよう。

病室で着るものといえばパジャマくらいのものなので、
着替分も含めて4着くらい。
あとは下着用のステテコ数枚。

私は普段、パジャマの下に下着をはかない。
パジャマ脱いだらスッポンポン。

始めの頃、医師や看護師が検査のため
パジャマのズボンを下げようとする。

彼ら彼女らはズボンの下は下着と確信しているようで、
お腹の具合を触診するために、
パジャマのズボンを一気に引き下げる。

あわれ、私の下半身はまる見えになりそうに。
「あれ? 下着、はいてないの?」

驚いて触診を止められるのも困るので、
ステテコをはくことにしたのだ。

こうして、私は無菌室生活を
快適に過ごしているのだが、
問題はただひとつ、晩酌ができないこと。

夕食以降、時は止まってしまったように動かない。

いつもなら、ワインを飲みつつチーズなどをつまむ。

同じく止まったような時間でも、
ワインがあると
ゆっくりゆっくり夜が深まっていくのに。

抗がん剤治療の説明書に、
『チーズ、納豆、キムチ、
 ヨーグルトなどの発酵食品は禁止』とある。

なぜか、私の好物ばかり。
ワインも酵母菌でできている発酵飲料。

私は無菌室で夜な夜な叫ぶ。
「カネもいらなきゃ名誉もいらぬ。
 あたしゃ、も少し納豆菌、
 ワイン酵母菌が欲しい〜!」

               (つづく)




明るく軽く親切なのに。
 ほんの少し悲しみの味がするのだ。
 マジックというのが、もともとそういう
 素性のものなのだろうか。ー
        糸井重里(帯コピーより)

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