明日は、なにして
2018-12-02
世の中、高齢化が加速度的に進んでいる。
まわりを見渡せば、
私を除いて老人ばかりになっている。
やれやれ。
大半の人々が大人になったので、
街が穏やかになったかといえば、そうでもない。
むしろ、老人たちはいらいらしている。
街のあちこちで、声を荒げる老人を見かける。
つい先日のこと、
「歩行者たち、どいて、どいてっ!」
とばかりに自転車が向かってくるから、
「危ないじゃないかっ!」
と、どなろうとしたら、前を歩いていた老人が先に、
「こらっ! 危ないぞっ!」
今や老人たちの方が気が短くなったらしい。
対して、若者たちは大人しくなっている。
なんとも不思議な世の中。
定年を迎えた知人が、
「とうとう俺も失業者、なんだか心がポッキリ。
小石はいいなぁ、定年がなくて」
私は日雇いのマジシャン。
仕事のある日は出かけて、しゃべる肉体労働者。
で、仕事のない日は失業者。
ある日、演芸会に呼ばれてマジックを披露する。
一日だけの仕事。
翌日、名古屋に出かけ、某企業のパーティに出演。
これも一日だけ、日帰りの仕事。
翌々日は仕事がなく、休み。
つまり、失業日。
これまで、働く合間に
数えきれないほど失業していて、
すっかり失業に慣れている。
あははは。
こないだの失業日、朝、目が覚めて
ふと心に浮かんだ。
「今日はなにして遊ぼうかな」
我ながらすごいと思いましたよ。
定年を迎えた知人が、朝、目を覚まして、
「今日一日、なにをすればいいんだろう」
そう嘆息し、涙したのとはえらい違い。
以来、休みの朝はいつも思う。
「今日はなにして遊ぼうかな」
そうなると不思議なもので、仕事の日の朝にも、
「そうだ、今日のいつものマジックのルーティン、
ちょいと遊んじゃおうかな」
これが遊び心っていうやつかい。
伸びたグレーの髪を団子に結んで(これも遊び心)、
いつもとは違うしゃべりから始めてみる。
相方が呆れたような顔で見ている。
「すまんすまん」
仕事中でも、やっぱり遊びは面白いんだよ。
帰りの新幹線車内、もう明日のことを夢想している。
「さぁて、明日はなにして遊ぼうかな」