ライフ・イズ・マジック

人生はマジックだ、なんて言い方そのものが怪しいでしょ。
ひょっとしたら、マジックってのは、
宗教の種かもしれないし、驚きの商品化かもしれないし、
人類最古の情報産業だったりもして。

軽い笑いもとれるし、ちょっと好かれたり嫌われたり、
ひとつの国をまるごとだまし取るようなこともできる。
いま、マジックを考えたり感じたりするのは、
なんだかとても大事な気がするんですよ。

おおげさな紹介はよしましょう。
マジック・ナポレオンズのパルト小石さんです。どうぞ!

ナポレオンズのHPは
http://www.tvland.co.jp/napoleons/
e-mail:napoleons@tvland.co.jp

明日は、なにして

世の中、高齢化が加速度的に進んでいる。
まわりを見渡せば、
私を除いて老人ばかりになっている。

やれやれ。

大半の人々が大人になったので、
街が穏やかになったかといえば、そうでもない。
むしろ、老人たちはいらいらしている。

街のあちこちで、声を荒げる老人を見かける。

つい先日のこと、
「歩行者たち、どいて、どいてっ!」
とばかりに自転車が向かってくるから、

「危ないじゃないかっ!」
と、どなろうとしたら、前を歩いていた老人が先に、
「こらっ! 危ないぞっ!」

今や老人たちの方が気が短くなったらしい。
対して、若者たちは大人しくなっている。
なんとも不思議な世の中。

定年を迎えた知人が、
「とうとう俺も失業者、なんだか心がポッキリ。
 小石はいいなぁ、定年がなくて」

私は日雇いのマジシャン。
仕事のある日は出かけて、しゃべる肉体労働者。
で、仕事のない日は失業者。

ある日、演芸会に呼ばれてマジックを披露する。
一日だけの仕事。

翌日、名古屋に出かけ、某企業のパーティに出演。
これも一日だけ、日帰りの仕事。

翌々日は仕事がなく、休み。
つまり、失業日。

これまで、働く合間に
数えきれないほど失業していて、
すっかり失業に慣れている。
あははは。

こないだの失業日、朝、目が覚めて
ふと心に浮かんだ。
「今日はなにして遊ぼうかな」

我ながらすごいと思いましたよ。
定年を迎えた知人が、朝、目を覚まして、
「今日一日、なにをすればいいんだろう」

そう嘆息し、涙したのとはえらい違い。

以来、休みの朝はいつも思う。
「今日はなにして遊ぼうかな」

そうなると不思議なもので、仕事の日の朝にも、
「そうだ、今日のいつものマジックのルーティン、
 ちょいと遊んじゃおうかな」

これが遊び心っていうやつかい。

伸びたグレーの髪を団子に結んで(これも遊び心)、
いつもとは違うしゃべりから始めてみる。

相方が呆れたような顔で見ている。
「すまんすまん」
仕事中でも、やっぱり遊びは面白いんだよ。

帰りの新幹線車内、もう明日のことを夢想している。
「さぁて、明日はなにして遊ぼうかな」

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