magic
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


ふつうの、おじさん

おいらは、おじさんである。
さいきん、おじさんはあちこちで
ダメ出しされている。

「平成です、コンプライアンスの時代です」
分かってますよ、みたいな顔をしながら、
実は昭和に生きてる、おじさん。

いや、別に昭和が悪いわけではないけれど。

元気でやんちゃで、時に暴走。
酒のせいにしたがる。
相手が悪いと思いたい。

「いやいや、悪かった」
笑ってすませたい。
「だって、俺たちの時代はそうだったんだよ」

おじさんは成功体験を忘れられない。
「ふっふっふ、オレもまんざらじゃないね」
なんてね。

すまんすまん。
ごめんなさい。
分かっちゃいるんだよ。

おじさんがおじさんに会うと、なぜか、
「どっちが上なのか」
と、比べ合う。

相手の方が下だと思えば、
マウントして相手を押さえつけにかかる。
上だと感じれば腹を出して尻尾ふりふり。

向こうから、
おじさんマジシャンが近づいてきた。

おじさんマジシャンは、
自分の方が上だと考えて
上から目線。

自分が上だと信ずる根拠は、ただキャリアのみ。
「俺はもう50年もマジシャンやってんだよっ!」

おいらは仕方なく、
「どうも先輩、お疲れさまです」
と、ぺこり。

でも、心の中でぶつぶつ。
「キャリア5年で
 操縦飛行1000時間のパイロットと、
 キャリア10年で
 操縦飛行100時間のパイロット、
 どっちが信頼できる?」

キャリアの長さなんて関係ないのさ。
実際の操縦飛行経験が長いパイロットの方が、
信頼できるに決まってるよ。

マジシャンもそう。
実際に、お客さんの前で多く演じた
マジシャンの方が信頼に足るはず。

ただマジシャンでございます、
50年たってますと言われても、ねぇ。

そう苦々しく思っていると、
もうひとりのおじさんマジシャンがやってきて、
「みんな、おじさんになっちゃったよなぁ」

たしかに、おじさんだぁ。
みんな、おじさん。
ちょっと困った、おじさん。

おいらももろもろ反省しつつ、
ふつうにふつうの、おじさんになりたい。
ふつうが、いちばん。


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2018-05-13-SUN
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