magic
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『地獄からの大脱出』


私はどうやら、地獄の入り口にいるようだ。
となると、目の前にいるのはえんま様か。

「お前は生前、かなり悪いことを
 してきたようじゃな。
 よって判決は有罪」

「いやいや、えんま様、
 私は有罪になるような罪は
 一切犯してないですよ。
 神様に誓ってもいいです」

「バカ者め、地獄の入り口に神様はおらん」

「でも、本当に罪なんて犯していません」

「ならば、お前の過去の罪を見せてやろう」

目の前のスクリーンに、
私の人生が映像になって流れ始めた。

「ほれほれ、信号無視をして
 横断歩道を渡っておるではないか。
 こちらは、酒を呑んで
 自転車に乗っておるらしいのう」

「だって、車なんて1台も走ってないし、
 赤信号でも安全だったのですよ。
 確かにビール呑んで自転車に乗りましたけど、
 5時間過ぎてましたから、シラフと同じですよ」

「ダメ、罪は罪。
 信号無視、酒気帯び運転で有罪。
 それにお前、子供の頃に
 スカートめくりをやっておったな。
 セクハラで有罪」

「セクハラって、昔はなかったですよ。
 それに、とっくに時効ですよね?」

「地獄に時効というのは、ない。
 それと、同級生とケンカして叩いたな。
 暴行罪で有罪」

「ずいぶん小さなことで罪にするんですね」

「バカ者、地獄では罪に大小はないのじゃ」

「でも、私だって良いこと、善行もしましたよ。
 その点を情状酌量していただいて‥‥」

「あぁ、善行ね、あの小さい小さい、
 ボランティアのマネごとみたいな」

「いやいや、えんま様、
 さっき地獄には大小ないって言いましたよね」

「うるさいっ!
 いちいちツッコミを入れるでないっ!
 そうか、お前は漫才の
 ツッコミ担当だったんじゃな」

「漫才師ではありません。
 マジシャンです」

「どっちでもいいわい。
 とにかく、有罪です」

「では、えんま様、
 せめて執行猶予を付けていただけませんか?」

「執行猶予? 
 そんなものは地獄にはないが、
 確かに少し情状を酌んでもいいかもしれん。
 では、地獄1年、執行猶予1年でどうじゃ?」

「もうひと声、執行猶予3年でお願いします」

「じゃぁ、執行猶予2年」

「もうひと声、いよっ、えんま様、太っ腹」

と、調子に乗ったところで目が覚めた。
あぁ、良かった、助かった。

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2018-01-14-SUN
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