magic
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『私の悪いクセ』


私には悪いクセがある。

友人知人を家に招いて酒を飲む。
酔っ払うと、ついつい映画のDVDを出してきて、
勝手に上映会を始めてしまうのだ。

最近のお気に入りはビリー・ワイルダー監督作品の
『お熱い夜をあなたに』。
原題は『AVANTI』。
(以下、映画の内容に触れています。)

イタリアのイスキア島で繰り広げられる、
米国人男性と英国人女性の恋の物語。

米国大企業の会長さんが
イスキア島で交通事故を起こし、帰らぬ人となる。
その車には、英国人女性が同乗しており、
ともに亡くなってしまう。

会長の息子(社長)は、急ぎ遺体を引き取りに
イスキア島に向かう。
同じく、英国人女性も母親の遺体を引き取りに
島に向かう。

実は、会長さんは長い夏休みを
イスキア島で英国人女性と一緒の部屋で過ごしていた。
つまりは、夏の1ヶ月間だけの不倫関係。

時代設定は1960年代だろうか。
おおらかな空気が画面に満ちている。

スマホなんてない。
ガラケーもパソコンもない。
それがとても懐かしく、素敵に思えて仕方がない。

映画の中で、人々は2、3時間かけてランチを楽しみ、
ワインとともに果てしない夜を愉しむ。
あぁ、うらやましい。

メールやらメッセンジャーやらラインで
邪魔されることもない。
不便ではあるが時間はゆるり、ゆるり。

何事にもせっかちで、お金ですべて解決しようとする
米国人男性と英国人女性は、
いつしかイタリアの夏に融和してゆく。

映画は、米国人男性と英国人女性が
それぞれの父と母と同様に、
イスキア島で夏の1ヶ月を過ごすことを
約束するシーンで終わる。

悪く言ってしまうと、親子二代に渡る不倫の物語である。

そんな映画を、招いたカップルやご夫妻に観せる。
ひょっとしたら怒られるかもしれない、
とても不快にさせるかも、とも思う。

しかし、きっとワインのせいなのだ。
ワイン好きの私は、ワインを飲みながら
人生を謳歌したいだけなのだ。

私はいつしか映画の世界に入り込み、
イスキア島で登場人物たちとワインで乾杯している。

以前は『忠臣蔵』や『座頭市』のDVDを
若い世代の友人知人に観せていた。

それよりは私も成長している。
今はワインを飲み、
「いいでしょ、いいでしょ。
 ホ〜ント、スマホなんて大嫌いだよ」
などとぼやきつつ友人たちを振り返ると、
全員スマホをチェック中。

「まったく、最近の若いもんは‥‥」
と思う、私の悪いクセ。

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2017-09-24-SUN
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