magic
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『骨はくっついたか?』


『七転び八起き』なんていう言葉があるけれど、
私の人生、何回転んで起きてこられたのだろう。
本当は、まだ転がったまんまだったりして。

先月、何回目かの転倒で小指を骨折してしまった。

自分では単に小指の骨折と思っていたが、
正式な診断名は『右第5中手骨近位端骨折』。

『みぎだいごちゅうしゅこつきんいたんこっせつ』
と読むのだろうか。

まるで落語の『じゅげむ』のよう。
「『みぎだいごちゅうしゅこつきんいたんこっせつ』
 の小石さ〜ん、いますか〜?」

「はい、
 『みぎだいごちゅうしゅこつきんいたんこっせつ』の
 小石で〜す」
なんちゃって、実にまどろっこしい。

骨折後、しばらくは、
「右手で箸を持てない」
「ペンを持てないので、文字とか書けない」
「右手を使うマジックができない」
などと、できないことばかり数えていた。

しかし、それじゃぁ人生面白くないと思い直し、
『右第5中手骨近位端骨折』でもできることを
数えることにした。

「元々は左利き。
 小学校に上がる頃に
 右手で箸や鉛筆を使えるように直されたが、
 今でも左手で箸が使える」

「左手でも文字は書ける。
 ちょい下手ではあるが、
 初めて文字というものを教わった頃のような、
 なんだか可愛い文字が書ける」

「手指を使うマジックはできないが、
 よく考えたら
 元々手指を使うマジックはしてこなかった。
 しゃべってゴマかす芸風だから、仕事もできる」

そうそう、転んで骨も心も折れてしまったが、
心は早々に治すのだ。

「だいたい4週間で骨はくっつきます。
 でも、その後しっかり力が入るようになるには、
 もう1ヶ月かかりますね」

折れたまんまの心で2ヶ月以上なんて、
苦し過ぎるではないか。
考え方を変えて、心はサッサと回復させるとしよう。

私はマジシャンである。
なので皆さん、
「あらら、さぞかしお困りでしょう。
 あぁ、かわいそうに」
などと、同情してくださる。

ありがたく思うのだが、元来、
マジシャンは楽天的でなければ務まらない職業なのだ。

「ハンカチからハトを出そうとして、
 ハトが嫌がって出てこなかったら、どうしよう」

「トランプを選んでもらって、
 もし当てられなかったらどうしよう」

などと悲観的に考えていたら、
マジシャンなんてやってられない職業なのだ。

ハトが嫌がって出なければ、
「今日はハトの定休日です」
とゴマかしましょう、ふっふっふ。

トランプが当たらなければ、
「今日のマジックは大スランプ。 
 トランプも時々、大スランプ」
時事ネタも適当に織り交ぜて、へへへ。

骨はほぼ、くっついたようで、
「順調に回復してまして、完治ももうすぐ」
という診断をいただいた。

残るは、私の持病『指先マジック苦手病』。
こいつはまだまだ治りそうもない!?

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2017-09-03-SUN
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