magic
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『暑中お見舞い』


お父ちゃん、元気ですか?

僕はこのところの暑さにグッタリしつつも、
元気ですので、安心してください。

それにしても、
この焼けるような日差しを浴びていると、
以前に旅したバリ島を思い出します。

バリ島では朝、ホテルを出ようとすると
燕尾服のかっこいいおじさんが
傘を差し出してくれるのです。

雨は降ってないからいらないと言うと、
「今は晴れてるから日傘用にどうぞ。
 昼頃になるとスコールがあるから雨傘に。
 いずれにしても、バリ島の傘はじゃまにはなりません」

なんて、気の利いたセリフで送り出してくれます。
でね、本当に突然、スコールになっちゃって。
確かに、傘があった方がいいなぁと納得するのです。

そんな話をお父ちゃんにしましたよね。
すると、
「ワシも昔、バリ島に行ったことあるよ」

「ええっ? バリ島に行ったこと、あるの?」
私が驚いていると、
「そうじゃ、軍艦に乗ってなぁ」
お勤め、ご苦労様でございました。

お父ちゃんのかかりつけのお医者さんが言いました。
「お父さんはねぇ、
 10年後も今のように元気でも驚かないけど、
 95歳だからねぇ、明日、コロリと逝っても
 不思議じゃない(笑)」

コロリはもうちょい先送りして、
どうか105歳の誕生日を祝わせてください。

そうそう、前も言ったけど、ご飯炊いて保温にして、
まんま10日も置きっ放しはやめてくださいね。

僕は初めて10日保温のご飯を見た時、
ずいぶんと黄色くなっていて、
サフランライスかと思いましたよ。
ずいぶんオシャレな食べ方してるなぁって、
勘違いするところでした(笑)。

以前、私が送った高級ブランドのカバンに、
お父ちゃんがフェルトペンで
自分の名前をデカデカと書いたことも思い出しました。

「どこかに忘れてきても、
 これでちゃんと戻ってくるでなぁ」
お父ちゃんは常に正しいなぁと思いました。

この間、自分の影を見ながら歩いていたら、
自分の影がどんどんお父ちゃんに似てくるのです。
私の影は、お父ちゃんなのでした。
DNAって、すごいですね。

また帰ります。
それまでどうかお元気で。
不詳の息子 拝

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2017-07-16-SUN
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