magic
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『懺悔の記』


先週の『ライフ・イズ・マジック』に、
私が子供のころに犯したスイカ泥棒、
柿泥棒について書きました。

誠にもって恥ずかしい過去のお話でありましたが、
今週は少し言い訳をさせてください。

子供のころ、我が故郷にはあちこちに
田んぼや畑がたくさんありました。

というか、田んぼや畑だらけで、
ところどころに民家が遠慮がちに
ぽつんぽつんと建っているという、
典型的な田舎の田園風景なのでした。

スイカ畑は豊年満作、
そりゃもう大きなスイカがごろんごろんしているのでした。
友人たちと川遊びに出かける途中、
誰ともなく畑に忍び寄って
スイカをひとつだけ、盗みました。

盗んだスイカは川に浮かべ、
冷えたころに川縁で友と分けあって食べたのでした。

柿にしても、どこの家の庭にも柿が生っていました。
豊作過ぎて、塀の外に伸びた枝から熟しすぎた柿が
ぽとんぽとんと道に落ちているのでした。

私たちは塀の外に生っている柿に手を伸ばし、
もいで食べたという次第なのです。

とにかく、根こそぎ全部、
盗んでしまったわけではないのです。
ほんの少し、余った分をちょいといただきます、
ごめんなさいね、という感覚だったのです。

いやいや、分かっております。
ひとつだから、塀の外だからと言い訳し、
「だから、無罪だよ」
と、開き直る気持ちはありません。

本当に申し訳ありませんでした。
あらためて深くお詫び申し上げる次第でございます。

『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャンは、
ほんの少しのパンを盗んだだけなのに長く投獄され、
釈放後にも盗みを働いてしまいました。

しかし、その半生を悔いて改心し、人々を導き、
天に召されたのでした。

一方、スイカ泥棒、柿泥棒だった少年は捕まらず、
投獄もされないまま長じてマジシャンとなりました。

司会者が紹介しています。
「今から手品師が登場いたします。
 皆さん、財布や時計など、お持ち物にご注意願います。
 ナポレオンズです、どうぞ〜! 」

まるでスリか泥棒のような扱いではありますが、
これが妙にウケるから仕方ありません。

私はステージに登場し、弁解をします。
「今、スリか泥棒のように紹介されました。
 しかし、皆さん安心してください。
 泥棒はもう、ずいぶん昔にやめております」

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2016-06-12-SUN
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