MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『旅日和』


< 松茸に出逢う旅 >

すっかり春めいたある日、私は旅に出た。
といっても、今回はたった1泊、短い旅だ。

空港からお迎えの車で町の文化ホールに向かう。
この町には昨年の秋にも招かれていて、
今回が2回目、アンコール公演の旅なのだ。

車中、昨年の秋の道程を思い出していた。

快晴の秋空の下、同じ道を車で走った。
道端のあちこちに『松茸の里』という看板が
立っていた。

道すがら、運転手さんと、
「この辺は、松茸がたくさん採れるんですか?」
「そうなんですよ、この山並みですからねぇ、
 松茸やらナンやらのキノコ、山菜は
 たくさん採れますねぇ」
そんな会話を交わしたものだ。

会場に到着し控え室に入ると、
すでにお昼の弁当が用意されていた。
私は、道端の『松茸の里』という看板を
頭に浮かべながら、
期待をふくらませて弁当箱のフタを開けた。

やったぁ〜!
やはり、キノコの炊き込みご飯ではないか。
食べ進めば、きっと香り高い松茸に巡り会えるはず。
なんせ、ここは『松茸の里』なのだから。

私は次々と口に炊き込みご飯を放り込んだ。
しかし、掘っても掘っても出てくるのは、しめじ。
そう、最後までしめじご飯弁当だったのだ。

私はこの町を『松茸の里』改め
『しめじの里』と記憶することにした。
はて、今回の季節は春、
どんな弁当が用意されているのだろうか。


< 還る旅 >

旅に出た。
といっても、今回は2泊3日の里帰り旅だ。

替えの靴下は、左右のあるものを持ってきた。
左足用にはL、右足用にはRと薄く書かれているもので、
やはりフィット感がすこぶるいいのだ。

翌朝、靴下を鞄から取り出してみると、
なんと、私は右足用ばかりを鞄に入れてしまったらしく、
出てくるのはRと書かれた靴下ばかり。

仕方なく左足にも右用を履いてみるものの、
高いフィット感、ホールド感が裏目に出て、
左足が気持ち悪いのなんの。

仕方ないと諦め、大型スーパーに行って
靴下を買うことにした。
あれこれ品定めをするのだが、
25cm〜27cmのサイズばかり。

私の足のサイズは24.5cmで、
つま先が余ったり踵の位置がずれたりしてしまう。
弱ったなぁと思っていると、姉が、

「わたしもねぇ、ピッタリの靴下がないのよ。
 でね、子供用のにしたらピッタリだったのよ。
 最近の子供用って23cm〜25cmだったりする。
 この頃の子供って、大きいんだよ」

姉さんありがとうと感謝しつつ、
子供用の靴下を探してみると、
本当だ、私にピッタリのサイズではないか。

なぁんだ、さっきまで僕は自分を大人だと
信じていたのだが、まだまだ子供だったのだ。

旅は人を成長させるというが、
私は逆に、子供に還ってしまったらしい。

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2016-05-08-SUN
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