MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『たとえようもなく不味いが、えもいわれず旨い』

私はアルコールに弱い。
ビールなら350ml缶、そいつを全部飲んだら
すっかり酔ってしまう。

以前に聞いたことだが、
縄文人はアルコールに強かったらしい。
ところが、弥生人になると
アルコールに弱い人が出現したというのだ。
となると、どうやら私は弥生人らしい。

「まったく、最近の若者はだらしないねぇ。
 ちょこっと呑んだだけですぐ酔っ払っちゃうんだから。
 弥生人というんだっけ、本当に、新人類だよなぁ」

などと、縄文人にぼやかれていたのだろうか。

それはともかく、私は本当にアルコールに弱い。
それなのに、ほぼ毎日呑むのだから人間はややこしい。

まず、缶ビールをプシュッと開けて、グラスに注ぐ。
つまみは豆腐にかつお節をかけ、醤油をたらした、
いわゆる冷ややっこ。

あるいは厚揚げをレンジでチンし、
すりおろし生姜を乗せ、醤油をかけたもの。
イカの天ぷらも好きで、
それにポン酢をかけて食べたりする。

だいたい呑み3、食べ7くらいの割合で、
呑むというより食べてばかりなのだが、
それでも充分に酔っ払ってしまう。

酔っ払って思考能力が落ちるのだろうか、
続いてワインに手を伸ばしてしまう。
グラスに少しだけワインを注ぎ、
さて、つまみをと冷蔵庫に向かう。

納豆がある時は醤油を少しだけかけ、
オリーブオイルを多めに加える。
あとは、かきまぜる、かきまぜる。
そいつを海苔で巻いて口に入れ、
噛んでトロトロになったらワインを口に含む。

つまりは、ワインと海苔納豆を口中調味するのだ。
これが、なんというか、モワモワした味わいなのだ。

ジャパンとフランスが口中大ゲンカし、
それをオリーブオイル、イタリアが、
「まぁまぁ、仲良くやりましょうよ、ペルファボーレ」
と、融合を促してくれる感じ。

「いやぁ、奇妙な味だ。
 たとえようもなく不味いが、えもいわれず旨い」
などと感嘆しつつ、ワインを2杯、3杯と飲み続ける。
もう、相当に酔っ払ってしまう。

思考能力は完全に失われ、
ヨレヨレとリキュールを開ける。
いつも呑むのはウンダーベルグという、
ドイツの名産リキュールである。

こいつは44度もあって、口中をサッパリしてくれる。
というか、朦朧とした意識を
ガツンと刺激してくれるのだ。

拙宅での晩酌に、フランスとイタリアのみならず、
ドイツまで参加していただいて、
まさに口中はユーロ圏状態。
私は毎晩のように、アルコールに誘われて
ヨーロッパ周遊紀行を愉しんでいるのだ。

不思議なことに、風呂に入ると
アルコールはお湯に溶け出したかのように
体から消えているように感じられる。
それで、風呂上りにビールひと缶をあける。

だが、私はそこでアルコールをきっぱりと絶って
ベッドに入る。
きっと、まだまだ呑み続けているであろう
縄文人たちの祝杯を恨めしく思いながら。

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2015-03-15-SUN
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