MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『朝ごはん、昼ごはん、夜ごはん』

< 朝ごはん >

ホテルで朝ごはんを食べた。
早朝なのに、
もう大勢のお客さんが席を埋めている。
僕もプレートを手に取り、
シャケ、煮物、ジャコおろし、
納豆などを乗せていく。

席に着こうとすると、
「よろしければ、
 別室にご案内いたしますが・・・」
前夜にディナー・ショーに出演したタレント用の
部屋を用意してあるという。

少し躊躇したが、
私は別室へと案内してもらうことにした。

広い部屋に、大きなテーブル。
僕はひとり寂しく朝ごはんを食べ始めた。
やはり、ビュッフェは賑やかなところで食べるのが
楽しく美味しいに違いないのだ。

もそもそとごはんを食べながら、ふと、
あの師匠のことを思い出した。

以前のこと、師匠と一緒に
ホテル内のビュッフェ会場に行った。
すると、同じように、
「師匠、あちらにお部屋を
 ご用意させていただいております」
 
そんなホテル側の配慮に、
「いやいや、ここでいただきますよ。
 なるべく、食いもんの近くがありがたいですよ。
 ねぇ、あぁたもそうでしょ」
師匠は穏やかな笑みを浮かべ、
丁寧に断られたのだった。

あれこれ思い出しながら、
僕はしんみりと朝ごはんを食べた。

< 昼ごはん >

表参道に、ビコリッチという会社がある。
オフィスに大きなキッチンがあり、
大勢で囲める大テーブルもある。
「週イチでランチ作って、みんなで食べるんだよ。
 小石さんも、来てね」

こんなありがたいお誘いを断る手はない。
僕は毎週のように通った。
料理はご近所にお住いの方が作ってくださり、
スタッフの皆さんと、僕も手伝う。

みんなでワイワイと賑やかに料理をし、
「あぁ、これ美味しい」
「これって、味付けはどうするのかなぁ?」
「この野菜はねぇ、
 こないだ◯◯さんがくれたんだよ」
なんて言いながら食べる。

しばらく通ううちに、
昼時になるとビコリッチの、
あの食卓を思うようになった。
ビコリッチという会社名を聞くだけで、
ヨダレが出るようにさえなった。

僕はパブロフの犬ならぬ、
ビコリッチの犬になったみたい。

< 夜ごはん >

おじさん体型になったので、
ちょいと腕立て伏せや
腹筋運動をすることにした。

続けていると、少しずつお腹が減っこんできた。
やはり、毎日の鍛錬は着実な効果をもたらすものだ。
体を鍛えて、僕は苦みばしった
いいおじさんになりたいのだ。

運動をするとお腹がすく。
夕食もしっかりと食べ、
デザートにアイスクリームや
ケーキも食べるようになった。

ふと鏡を見ると、ちっとも苦み走っていない、
甘味走ったおじさんが映っていた。

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2014-11-23-SUN
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