MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『雨の日、曇りの日、晴れの日』

< 音声案内 >

マッサージ機が壊れたので、
修理を依頼することにした。
長年、愛用していたので
保証期間はとっくに過ぎている。
かなりの出費を覚悟しなければならないが、
動かないマッサージ機はただの粗大ゴミである。

さっそくフリー・ダイヤルに電話をした。
いつもの音声アナウンスが聞こえてきた。
『この会話は、お客さまへのサービス向上のため、
 録音させていただきます。
 始めに、商品についての問い合わせは1を、
 故障、修理のお問い合わせは2を‥‥』

私が2を押すと、いつもと違うアナウンスが始まり、
『修理をご希望の商品名をお話しください』

ほほう、今は音声を認識してくれるのかと感心しつつ、
「マッサージ機」
と、やや緊張した声を出した。

すると、
『せんたく機、ですね?
 違いましたら、いいえ、とお答えください』

私は焦って、
「い、いいえ」
と、大声で答えた。

やや間があいて、
『認識できません』

我が家のマッサージ機は、未だ粗大ゴミのままだ。


< 遅刻の理由 >

青山のレストランで打ち合わせがあった。
約束の時間までやや時間があったので、
原宿駅で降りて歩くことにした。

地上に出ると、なぜか歩道が人で埋め尽くされている。
「デモ行進か何か、行われているんかいな?」
私の困惑をよそに、人々はデジカメや携帯を
車道の方に向け始めた。

私も人々の視線の先を見てみた。
すると、音楽隊を先頭にして大勢の人々がぞろぞろと
車道を行進をしているではないか。
しかも、全員が派手かつ奇天烈なコスチューム姿。
そう、人、人、人の、ハロウィンの大行進だったのだ。

ハロウィンは、もはや日本で最も盛り上がるイベントに
成長したらしい。
小さな子供も参加でき、お菓子ももらえる。
大人は思い切ったコスプレを楽しめ、
日常から解放されて夢想の世界に浸れるのだという。

「七五三て、地味でしょ。
 バレンタインは若者だけだし、
 クリスマスも、なんだか普通だし」

確かに、クリスマスやバレンタインデーなどと比べて、
人々のはじけっぷりが半端ないようだ。
外国人から見ても、
「こんなにタノシイのは、ニホンだけだよ」

どうやら、我が国は外国の文化を取り入れ模倣し、
いつの間にか日本風に昇華してしまう
ジャパン・マジックを、ハロウィンにも用いたらしい。

私は飽きずに行進を眺め続け、
打ち合わせに遅刻して怒られた。


< サンマは目黒に限る >

目黒で仕事があった。
帰り道に、ずいぶんと混んでいる
ラーメン屋さんがあった。
ちょいと小腹がすいてるしと、店に入った。

「いらっしゃいませ〜、
 そちらの美人のお隣にどうぞ!」

なんて言われるから、こちらも、

「えっ、美人? どこ? いないよ」

などと戸惑うフリをしてみる。

「お客さん、はい、
 こちらの美人の隣へ、へへっ」

私はメンマが好きだ。
スープと麺が主役なのだろうが、
おっとラーメンには
メンマがいてくれなくっちゃいけない。

「はいよっ、カウンター5番さん、
 メンマたっぷりトッピングの醤油、一丁。
 はいはい、メンマは目黒に限る、はいっ」

おじさんのギャグ攻撃に、
食べる前に麺食らう私であった。

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2014-11-02-SUN
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