MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『夢のお江戸ライフ』

変な夢を見ちゃいましたよ。

おいらはさぁ、テレビを見てるんだよね。
そしたら、テレビに出てくる人が皆、
江戸時代みたいな格好なんだよね。

いやいや、
江戸時代にタイムスリップしたとかじゃなくてさ。
あくまでテレビとかは現代で、
テレビに映っている男の人たちがちょんまげ、
着物姿なんだよ。
女性たちは着物だったり洋服だったりで、まぁ、
夢だからデタラメなんだけれど。

でね、テレビでしゃべっている男の人の下に
テロップが出てて、『将軍』て書いてあって。
将軍が言うんだよ。
「私は正直言って、昨今の国際事情は
 分からないのであります。
 例えば宗教問題、宗派の対立等、本音を言えば、
 さっぱり理解できないのであります。

 子供の頃から八百万の神様、
 仏様を漠然とではありますが、信じてまいりました。
 つまりは多神教ということであります。

 そこで、私は鎖国政策を取り、私自身も国内のこと、
 国内情勢だけに対処する所存であります」

夢なんだけれど、
「うん、それがいいね。
 本当に理解できていないのに、
 むりやり分かりに行こうとするのは良くないやね。
 それなら、問題山積の国政に
 じっくりと向き合ってほしいよ」

なんてね、テレビに向かってうなずいてたりして。

画面には家老さんが出てきて、
「殿はこれより城に戻ります。
 殿は今後、しばらくは外国訪問をいたしません。
 城にこもり、国内の様々な懸案を速やかに解決すべく、
 邁進いたす所存でございます。

 なお、皆さまご存知の副将軍が各地を廻り、
 官の汚職、官民癒着、
 ブラック企業を絶対的な権限を持ちまして
 懲らしめます」

そうだよ、殿様が外遊している間に
官は自己の保身に邁進するは
癒着に汚職がはびこるは、
低賃金に長時間労働じゃぁ、
国民はたまったもんじゃないよね。

そうですよ、現代の日本にも
水戸のご老公様が必要なんだよ。
日本全国津々浦々をくまなく廻っていただいて、
小さな問題から大きな難問まで
地道に解決してほしいもんですよ。

鎖国であっても外国の政治家の来日はウエルカム、
ただ、表立った政治的な活動は止めてもらってね。
そうなれば政治家だって実業家だって観光客ですよ。
鎖国なのに観光客は増えて一石二鳥だよ。

江戸には寄席がいっぱいあって、
江戸だけで30軒以上あったらしい。
となれば手妻師、マジシャンは大忙し、
毎日のように寄席通い。
不安定な生活ともおさらばなのだ。

今の時代、
「今はグローバルな時代なんです。
 国内の小さな問題に囚われてはいけないのです。
 もっと大きな国際問題に目を向けて‥‥」

なんて言われて、内向きの小さな自分を恥じたりする。

でもね、井の中の蛙にとっちゃ、
やっぱり井戸が大切なんですよ。
井戸の中が丸く収まって初めて、
井戸の外のこともちゃんと考えられるってもんですよ。

目が覚めてからも、
しばらく殿様たちのちょんまげ姿を思い返していた。
なんだか慌ただしい思いに
やんわりとブレーキをかけるような、
ゆるゆるした夢だった。

ひょっとすると、我が内なる願いの現れなのだろうか。
確かにこのところ、気ばかり急いていたような気もする。
おいらも自己をしばし鎖国状態にして、
おのれを見つめるべきなのかもしれない。

はてさて、今宵はどんな夢を見るのだろう。

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2014-06-29-SUN
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