MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『夏への切符、東北の旅』

今年も東北ツアーの切符が届いた。
この切符を見ると、
なんだか夏への入場券のように思える。

東京駅8時20分発のはやぶさ5号に乗る。
この東北ツアーのいつものメンバー、
スタッフの皆さんと、
「おはようございます!
 今回もどうぞよろしくお願いします」
などと挨拶を交わす。

公演の司会を務めるAさんが私を見て、
「小石さん、あくまで仕事しに行くんですよ。
 分かってます?」

その日の私はブルーのパンツ、シマシマのポロシャツ、
頭には麦わら帽子を乗っけていたのだった。
確かに、夏のバカンスに出かけるような
スタイルではある。
それでも、
「いやいや、
 僕は勤労意欲が表に出ないタイプなんですよ」
と反撃を試みる私であった。

1時間半ほどで仙台に到着。
仙台駅から、マイクロバスで相馬市に向かう。
なんと1時間半以上かかる道のりだ。

相馬市は暑かった。
気温は31度、梅雨を通り越して真夏の暑さだった。

新築されたように真新しい建物の控え室で、
弁当をいただく。
ごく普通の弁当なのだが、
新幹線とバスを乗り継いだ旅先、
格別に美味しく感じられる。

公演を終え、今度はマイクロバスで郡山へ。
約2時間の道のりだ。
日が暮れる頃、やっと初日の宿泊先に到着。

チェックインを済ませて、近くの居酒屋で打ち上げ。
まだ初日、出演者もスタッフも元気一杯、
次々と飲み物を注文、ぐいぐい飲む。
地元産のホヤの刺身、貝類の刺身が旨いのなんの。

かつての東北ツアーでは、打ち上げの後、
更に数件ハシゴをしたものだ。
しかし、今は皆、コンビニで買い物をして
部屋飲みするのがせいぜい。

夜、眠るのが早くなった。
当然ながら、朝目が覚めるのも早くなった。
7時には朝食ビュッフェ会場へと向かう。

Rさんがすでにいる。
大きな体、Tシャツに短パン、首にタオルのスタイル。

Rさんは普通にご飯、みそ汁、シャケなどの朝食を食べ、
続いてご当地カレーライスも食べる。
背中に大きな汗ジミをつけ、顔の汗を拭き拭き食べる。
食べっぷりの見事さは、もはや立派な真打ちだ。

郡山での公演を終え、つばさ137号で山形へ。
山形での公演は、老舗のホテルの宴会場だ。

控え室は、禁煙と喫煙に別れている。
以前は、喫煙者が多かったが、今や喫煙者は少数だ。
従って、禁煙の控え室は芸人さん、スタッフで満杯、
喫煙の控え室はガラ〜ンとしているのだ。

午後4時に始まった公演も無事に終了、
貸し切りバスで仙台へと移動。
すっかり夜になった頃、仙台国際ホテルに到着。

チェックイン後、打ち上げ。
早くも飲みのペースが大幅にダウン。
「あれ?
 ここは山形だっけ?」
「違うよ、ここは盛岡だよ」
実際は仙台なのだが。

仙台で昼夜の公演を終え、はやぶさ29号で盛岡へ。
午後7時33分に盛岡駅着。
駅ビルの回転寿司が定番の打ち上げ会場なのだ。
マグロの中落ちの軍艦が旨い。
シメサバも旨い。

タクシーに分乗して今宵のホテルへ。
広い部屋でしばしぼんやり過ごし、
アシスタントのNに
夜食用のカップ麺を買ってくるよう依頼。

しばらくして、Nが部屋にカップ麺を持ってきた。
最近のNはウッカリが多い。
だが、今回はちゃんと買ってきてくれたのだ。

ありがとうと千円を渡す。
ずいぶんと高いカップ麺になるが、
遠いコンビニまで行ってきてくれた手数料だ。

夜中になって、カップ麺を食べようと
お湯を入れて気付いた。
箸がない‥‥。

箸をコンビニでもらってくるのをNが忘れたのだ。
私も、カップ麺を受け取った時点で
箸がないのに気付かなかった。
やれやれ。

フロントに電話すると、ホテルスタッフの方が
うやうやしく箸を部屋まで持ってきてくれた。
カップ麺は旨かった。

この後、ツアーは秋田、青森、八戸へと続いた。
車内で弁当を食べたり、
地元の店でご当地の名産を味わい、地酒を飲んだりした。

朝昼晩と、ひとつとして同じものは食べない旅なのだ。
寿司あり焼き肉あり、蕎麦ありうどんあり。
食べ物がバラエティ豊かになると、
旅も一気に彩り豊かなものになる。

ツアー最終日、新幹線が東京駅に着いた。
ホッとしつつも思い出す、
今回の旅で出逢えた東北各地の美味。

その豊かな味わいは、少しずつ戻ってきているようだ。
いつかまた、私は夏への入場券を買い、
東北への旅に出かけるのだろう。

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2014-06-22-SUN
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