MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『北海道定食・夏編』


北海道に着いた。
気温は25度と聞いたが、吹く風はひんやりとして
心地よい。
陽の当たる場所にいると北海道も暑い夏なのだが、
日陰に入ると冷たいほどの風を感じる。
東京なら、晩秋か冬の始まりの頃に吹く風のように
感じられる。

夕方になった。
口コミで知ったジンギスカンの店に出かけた。

おなじみの、鉄のお椀を伏せたような鍋がセットされた。
続いて、ラム肉がお皿に盛られてやってきた。
黒いお皿の上のラム肉は、濃いピンク色に見えて
実に美味しそうだ。
地元の人は、
「昔は、タレに漬けた肉を焼いて食べたんだよ。
 それはそれで、美味かったんだけどね。
 今はこんな風にタレに漬けないで、
 焼いてからタレに漬けて食べることが多くなったのさぁ。
 その方が、飽きないで食べられるんでないかい」

テーブルには、タレにお好みで加える生ニンニク、
乾燥ニンニク、一味唐辛子が並んでいる。
タレを舐めてみると、かなりさっぱりとしている。
生ニンニク、一味唐辛子を加えて濃いめにした。

「軽く外側に焦げ目がつくくらいで食べてください。
 その方が柔らかいですよ」
そうですかと、まずは熱くなった鉄鍋ドームの上に
肉を乗せる。
ジュ〜という音とともに、
みるみるピンク色が茶色く焼けていく。
店の人に言われた通り、両面が茶色く焼けたら
タレにどっぷりと漬ける。

肉はまるで臭みがない。
厚めの肉を、一気に噛み切る。
口の中で、甘辛で生ニンニクが効いた濃厚なタレと
肉の甘さをモグモグさせる。
真ん中はレア状態で、もっちりとした舌触りだ。

二枚目は、タレをたっぷりとつけてご飯の上に乗せた。
ジンギスカン丼の趣だ。
肉、タレ、白いご飯、渾然一体。
口の中で、うまうま、うまうま、うまうま。

ごっくんと飲み込むと口の中が肉の甘み、
タレの香りでほわほわしている。
生ビールをごくごく、クゥ〜。
後はこれの繰り返し。

「マトンはマトンで、いかにも肉の味でね。
 それはそれで美味いんだわ。
 でもね、ラムはやっぱり、柔らかいし臭みがないしね」
はぁ、そういう違いがあるのか。

この店は、メニューが豊富だ。
いくら丼、素麺もある。
いずれも小ぶりで、たらふくジンギスカンを食べた後でも
いけそうだ。
白いご飯に刻み海苔がかかり、その上にたっぷりのイクラ。
醤油をまとった粒がはじけ、魚卵の脂がとろける。
鮭よ今夜もありがとう。

素麺の汁には、トマトのピューレが
たっぷりと加えられていて、
そのお陰でさっぱりとしている。
素麺汁なのに、どこか洋風の香りが残る。

北海道定食のメインディッシュであるジンギスカンを
堪能できた上に、やはり北海道定食には欠かせない
イクラ丼も味わえた、一石二鳥の夜ご飯であった。

翌朝は、ホテルの朝食バイキング。
ご飯は、北海道を代表する品種のひとつ、ななつぼし。
北海道は、いまや有数の米どころになっているらしい。

お皿に日高産の鮭の塩焼きをひとつ。
鮭には豊富なビタミン、アスタキサンチンが
含まれているという。
アスタキサンチンが何だかは分からないが、
体には良いに違いない。
若返りのビタミンと言われるビタミンEが含まれる、
北海道のタラコもお皿に乗っけましょう。
うひょ〜、大好物の松前漬けもございますよ。
北海道は白老町のゆで卵、素材にこだわった健康卵らしい。
函館産のイカ沖漬けには、肝臓の機能を高めるタウリンが
多く含まれているとのこと。
それはともかく、ご飯との良き相性は永遠に不滅です。

お皿が満杯になって乗り切らないので、
南蛮味噌は直接ご飯の上に盛った。
北海道味噌に唐辛子を加えた、辛うまがクセになる味噌。

お椀に十勝の長芋すりおろしをたっぷり。
粗めにすりおろした山わさびが加えられていて、
まさに大人の味。

バイキングの恐ろしさ、テーブルには
普段の朝飯の3倍の量と思われる料理が並んだ。
ご飯に鮭、タラコ、美味過ぎる。
松前漬け、南蛮味噌、イカ沖漬け、ご飯おかわり決定。

みそ汁の代わりのように、お椀の長芋をすする。
うひょ〜、ダシが利いたトロネバが美味過ぎる。
山わさび、小粒でぴりり。

おかわりご飯に、北海道丼のようにあれもこれも乗せた。
白老町も十勝も日高も函館も、全部乗せた。
北海道丼は美味しい。

昼食は、ガイド本に載っている店に行くことにした。
カーナビが、
「目的地付近に到着しました」
と告げているのだが、建物すらない山奥だ。
あちこち周り、やっと山小屋風の店に到着。

「メニューはひとつだけ、ポトフ定食です」
玄米入りのご飯、色んな豆のサラダ、温泉卵。
見たこと、食べたことのない野草、山菜の天ぷら。
メニューの中で唯一、塩気が感じられる漬け物。

山奥の、精進料理の趣だ。
これが、美味い。
北海道の濃厚な旨味を味わい続けた舌に、
なんとも淡白な北海道の素材そのものの味が
美味しく感じられるのだ。
ポットに入っていて何杯でもどうぞのカモミール茶が、
爽やかで美味しい。

北海道は夜になった。
北海道の夜ご飯となれば、頭に勝手にラーメンが浮かぶ。
味噌、醤油、塩と、いつも心は千々に乱れる。
以前の旅で味わった函館の塩ラーメンを思い出し、
ついに塩ラーメンに決定。

大きなどんぶりの塩ラーメンがやってきた。
汁は透明、あぁ好い塩加減。
麺はちょい固め。
ホタテが4枚、ワカメ、コーン、シナチク、ネギ。
コーンが、汁の塩気を甘く丸くしてくれる。
やっぱり美味いなぁ、北海道の塩ラーメン。

夏の北海道定食を味わう旅は終わった。

ジンギスカンもイクラ丼も、
そうそうカニもいただきました。
焼きトウモロコシ、ソフトクリームという、
北海道定番のおやつも美味かった。
中でも、ラベンダーソフトは美味かった。
ラベンダーハーブのオイルを舐めているような、
ほのかな香りなのにオイリーな舌触り。
実は2本も食べてしまった。

ご馳走さまでした、北海道・夏盛りの定食。

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2013-07-07-SUN
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