MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『初◯◯』

初夢、皆さんは見られたのでしょうか?
昔から、縁起の良い初夢は

『一富士二鷹三茄子』といわれている。
『一富士二鷹』は何となく分かるような気がするが、
『三茄子』がどうにも分からない。

こういう場合、ネットで調べれば
諸説が出てくるのであろうが、
ここは私の勝手な解釈を述べてみたい。

『茄子』は『なすび』で、
『成す美』ではなかろうか。
そう解釈すると、芸事において
より高みを目指す人にとっては最も見たい夢、
それは『茄子』の夢であろう。

しかし、残念ながら私は
『茄子』の夢は初夢はおろか普段でも見たことがない。
ひょっとすると、名人上手と賞されている師匠たちは、
「あぁ、初夢には必ず『茄子』が出てくるねぇ」
てなことをおっしゃっているのだろうか?
来年の正月には、茄子を3分ほど見つめてから
眠ってみよう。

今週は2013年、私の『初◯◯』についての
考察でございます。


『初ストレッチ』

今年初どころか、人生初のストレッチを体験した。

「足が少し長くなる人もいますよ」

そのひと言ですぐさまお願いをしてしまったのだ。
なんせ私は長年、

「スラリと伸びた長い、胴」

と言われてきた。
今年からは足もスラリといきたいではないか。

時々、痛い。
もう、悲鳴をあげたいくらいに痛い。
特に足の裏の部分を伸ばされると痛くてたまらない。
だが、この痛みの先に足長の人生が待っているのだ。

「全身麻酔してもらってから、
 ストレッチはできないですかぁ、イタタタァ」

私の問いかけを完全に無視して、

「はい、息を吸って〜、吐いて〜」

足長おじさんへの道のりは、まだまだ遠い。


『初カット』

昨年来、ずっとお世話になっている美容院に出かけた。

「本年もどうぞよろしくお願いします」

「その挨拶、もう三百回くらいは言ってるでしょう」

などと話しながら、席に座る。

「今年は少し、
 雰囲気を変えたいなぁと思うんですよ。
 でも、その新しい雰囲気っていうのを
 なかなか言葉にできないんですよ」

カリスマ美容師のBさんは余裕の笑みを浮かべて、

「大丈夫ですよ。
 僕は、客さまの言葉だけを
 ストレートに聞いてるんじゃなくて、
 その言葉からどれだけお客さまの気持ちを読めるか、
 なんですよね」

そう言われて、私のイタズラ心に火がついた。

「じゃぁ、ナウなヤングがフィーバーしてるような感じで。
 でね、2013年は、アバンギャルドみたいな、
 それでいてコンサバ風なヘアスタイルにしたいんですよ」

そう告げてみた。
だが、カリスマ美容師のBさんは少しも動ぜず、

「分かりました。
 では、そういう風にしましょう」

終わってみれば、後頭部の絶壁も
見事にカムフラージュされている、
実にありがたいヘアスタイルが完成している。

Bさんは余裕の笑みを浮かべて、

「前はアバンギャルド、後ろはコンサバ風です。
 小石さんはすでにナウなヤングで
 フィーバーされているので、
 そこは何もいじってません」

カリスマ美容師、恐るべし。


『初忘れ』

歯医者さんを予約した。
通常は最寄りの駅から電車で行くのだが、
今日は少し歩いて別の路線で行くことにした。
運動にもなるし、電車賃も安いはずだ。
ただ、それには早めに家を出なければならない。

私は余裕を持って早めに家を出た。
20分ほど歩くと、駅前のパン屋さんが見えてきた。
「そうだ、久しぶりにあの店のパンを買おう」
後ろのポケットの財布を出そうとしたが、
財布がないのに気付いた。
家に忘れてきたのだ。

2013年、初忘れである。
パスモもスイカも財布の中、
パンを買うのも電車に乗ることもできない。

仕方なく、歩いて家に戻ることにした。
戻ってテーブルの上の財布を見つけ、再び家を出た。
だが、時間をだいぶ浪費してしまった。
最寄り駅から電車で行っても遅れてしまいそうだ。

私はタクシーで行くことにした。
結局、時間とお金を浪費することになった。
2013年の初浪費の日ともなった。


『初濡れ』

リュックを背負って散歩に出た。
途中で、お尻のあたりが冷たいのに気付いた。
なんと、リュックの外ポケットに入れてあった
ペットボトルのフタがしっかり締まっていなかったのだ。

歩く度にペットボトルの水がダウンを濡らし、
そのまま表面をすべってズボンを濡らしていたのだった。

ダウンはそうでもないが、
ズボンはお尻の真ん中あたりが相当に濡れて、
びしょびしょになっている。

まずい。
都会の街中を、
股間を濡らして歩くわけにはいかないだろう。
私は慌てて家に戻った。

ズボンを履き替えながら、
以前の恥ずかしい経験を思い出した。

裏地がフリースの暖かいズボンを買ったのに、
履いて街に出ると腰のまわりが寒いではないか。
なんだかスースーする。
調べてみると、前のジッパーが全開、
風がもろに吹き込んでいたのだ。
寒いやら恥ずかしいやら。

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2013-01-20-SUN
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