MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

『2010年、お疲れさまでした』


真新しかった手帳の中でいつしか時は過ぎて、
2010年のページも残り少なくなった。
手帳をめくりながら、今年1年を振り返ってみました。

1月 日本商工会議所シカゴ支部の招きで、公演が決定。
シカゴ市内の小中学校、日本人学校などを訪問。
「最近は、中国語を学ぶ学校が多くなりました。
 やはり、経済の動向が教育の現場にも
 反映するようですね」
シカゴは一面雪に覆われ、河も凍っていた。
深夜、街中に大きな熊が
現れることもあると聞いてびっくり。
実は、前夜ホテルの周辺を散歩した。
熊に出会わなくてよかった。
2月 私の故郷、岐阜県関市のお寺で公演。
実家から歩いて数分のところにあるお寺である。
子供の頃から遊び場だったお寺で、
まさか公演をするとは夢にも思わなかった。
小学校の同級生も多く来てくれた。
お釈迦様の誕生日を祝って、一緒に甘茶を飲む。
3月 六代目三遊亭円楽師匠の襲名披露パーティに参加。
笑点メンバーの小遊三師匠が、
  「六代目円楽とかけまして、東北新幹線と説く。
そのこころは、まずは仙台(先代)を越えるのが
使命です」
4月 NHK・FMの『トーキング・ウィズ松尾堂』に出演。
ラジオでマジックという、かなり無謀な企み。
中高生の頃、深夜放送を夢中で聴いていたものだ。
そのせいか、ラジオに深い思い入れがある。
いつか、ラジオ番組が持てたらいいなぁ。
5月 専修大学の同級生であるO君の娘さんが
結婚するという。
O君の故郷、山形に向かう。
娘さんの結婚式であるからには、
O君さぞかし号泣するのではと思いきや、
終止満面の笑顔。
めでたし、めでたし。
6月 大学時代に住んでいた経堂に、
友人の経営するライブ・カフェができた。
出演やら打ち合わせやらで、
経堂に行くことが増えた。
かの有名なお寿司屋さんにも
連れて行ってもらった。
学生時代には叶わぬ夢であった
美味しい寿司を満喫。
同時に、遠くなった大学生活を思い出す。
あの頃、アパートの部屋から見る世界は
限りなく広かった。
7月 年に数回、ある方のホーム・パーティに招かれる。
新年会、花見の季節、鱧の季節、紅葉の頃。
その度に、美味しい料理、お酒をいただく。
「冷蔵庫が満杯になった頃に、
 またお招きします」
ありがたや、ありがたや。

故郷の関市で、『ひとり・ぐるぐる』講演。
90分大いに語り、マジック少々。
8月 熊本の温泉ホテルでの
マジック・ショーにゲスト出演。
なにより、源泉掛け流しに感動する。

銀座の美容室でカットしてもらう。
「毛髪の流れ、頭蓋骨の型まで見えます」
というカリスマ。
「今後一切、小石さんの後頭部の絶壁は
 気にならなくなりますよ」
いままで一度も気にならなかったのに、
このひと言で気になり始めた。

麻布十番のスタジオで『3D』撮影。
「トランプを一枚、選んでください」
目の前に、マジシャンの広げるトランプが
飛び出してきた。
9月 渋谷のクラブに出演。
デジタル機器に関連するアイデア、
新製品を発表するパーティであった。
私たちのマジックの道具はアナログばかりなのだが、
逆にそれが面白いとご指名されたのだ。
「この『あったま・ぐるぐる』というマジックの
 道具には希少なレアアース、
 レアメタルが使われています」
観客から、
「ない、ない」
のツッコミ多数。
観客のほとんどが携帯、パソコン、
iPad等を手にしていて、
何をやっても拍手はなかった。
10月 酒造会社のイベントに出演するため、新神戸駅へ。
新幹線の駅前に、なんといのしし親子を発見。
どうやら新神戸付近では
ごく普通に見かけるとのこと。
日本はまだまだ謎に満ちている。

番組の打ち合わせがあった。
放送作家が質問してきた。
「なぜMr. マリックさんに
 嫌われているのですか?」
Mr.ガーリックと名乗って、
「マリックさんはうさんくさい。
 僕らはニンニク臭い」
 などと言ったため、と答えた。
 その後、なぜか番組は立ち消えになった。
11月 カナダ産の松茸が950円で販売されていた。
網で焼いてスライスし、
醤油マヨネーズを塗ったトーストに
はさんで食べてみた。
とてつもなく旨かった。

90歳を迎えられた女性の
お祝いパーティにゲスト出演。
『ひとり・ぐるぐる』をリクエストされ、
いつもより
余計に回して喜ばれた。
90歳ながら背筋ピンとされ、誰よりも滑舌よく
面白くて為になるスピーチをされる。
勝手ながら、
これからの人生の師とさせていただく。
12月 12月3日は、『奇術の日』である。
マジシャンのかけ声、
「ワン、ツー、スリー」
から、制定されたとのこと。
当日は、横浜にぎわい座で
マジックについての講演を依頼され、
笑いとマジックの講演を30分ほど。

手帳のページごとに、
なかなかに濃厚な日々がよみがえってくる。
すごくうまくいって、
「ひょっとすると、上達したかも」
と思う日もあれば、
「もうダメだぁ、もともと才能なんてなかったんだよ」
心底落ち込む日もあった。
うまくいった時、
「ビデオに撮っておけばよかった」
などと思うのだが、その日はやはりその日だけのこと。
手帳に書き留めるのがいちばんのようだ。

2010年、ありがとう。お疲れさまでした。

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2010-12-26-SUN
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