MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

『申し訳ありませんでした』


師走ともなりますと、
あちらこちらから飲み会のお誘いが
増えるのでございます。

お酒が嫌い、
あるいは下戸ならば良かったのですが、
私はお酒が大好きなのでございます。
お酒が好きで強ければ、また良かったのですが、
私は好きだけれども
あまり強くはない体質でございます。

あの夜も、たくさんお酒をいただいたのでございます。
始めは居酒屋さんでキノコの鍋などを囲んで、
ビールや焼酎などをいただきました。
2軒目では、もう少し強いお酒をいただきました。
もう充分に酔いまして、帰りの電車に乗りました。
駅に着いて階段を降りていたその時、
ダダダッと踏み外し、前のめりに倒れてしまったのです。
酔った頭でも、

「マジシャンの命である指先、
 手をついたら怪我をしてしまう。
 指先だけは、かばわなくては」

あわれ、私は額からすべり込んでしまったのでございます。

翌日お医者様に伺いますと、
額だけではなく体のあちこちの打撲と診断されました。
お医者様は、

「まぁね、そりゃぁ指も大切かもしれないけれど、
 マジシャンて頭も少しは使うでしょ。
 それに、あなたの場合はしゃべる方でしょ。
 だから、まずは口をかばって倒れた方が
 いいと思いますよ、むふふふふ、あっはっは」

とのことでございました。
誠に、申し訳ございませんでした。


牡蠣パーティに誘われました。
それはもう豪勢で、茹で牡蠣、焼き牡蠣、
もちろん生牡蠣と、牡蠣づくしでございました。

飲み物は持ち込みが許されておりまして、
私は大好きな白ワインを持参しました。
他の方々も白ワインを持ち込まれていて、
氷が大量に入ったケースに
ボトルを差し込んでおくのでした。

冷たく冷えた白ワインに生牡蠣、茹で牡蠣、
焼き牡蠣が沁みるように美味しいのでした。
酔っ払ってしまいました。
更にカラオケで盛り上がりまして、
締めのラーメンとなりました。

皆でカウンターに横並びになって、
注文したラーメンを各自待ちました。
私はしばしカウンターで眠りこけ、
洗面所に行って戻り、
とっくに来ていたラーメンを食べ始めました。

しかし、このラーメンの麺が極端に少ないのです。
もう、ほとんどスープしかないような状態なのです。
私は、

「なんだよ、これ。
 麺が少な過ぎだよ」

と、叫びました。
すると、すでに会計をしていた友人が戻ってきて、

「おいおい、それは俺の食べちゃった丼だよ。
 君のはその隣の、まだ手をつけてない方だよ」

誠に、申し訳ございませんでした。


ずいぶん以前のことでございます。
仕事でアメリカに行きました。
ホテルを出てしばらく歩いたところに、
ビヤホールを見つけました。
見知らぬ土地でもビアホールなら安全であろうと、
入って飲みました。

地元の強いお酒にもチャレンジし、
酔っ払って外に出ました。
帰り道にある公園に、なにやら行列ができていました。
興味と酔った勢いで、私も行列に加わりました。
すると、行列の終点で温かいスープをいただきました。
この行列は、ボランティアの炊き出しだったのです。

美味しそうなハンバーガー屋さんを
見つけたこともありました。
アメリカでしか食べられない
本物のハンバーガーに違いないと食べてみました。
味はまぁまぁでございました。
驚いたのはその値段で、すごく安いのです。
日本円で50円ほどだったのでございます。

後で伺ったところによりますと、
やはりボランティアの運営する施設で、
困っている人々を救済すべく運営しているとのことでした。

各団体の皆さま、誠に申し訳ございませんでした。


酔っ払って、隣の友人が食べて捨てた枝豆の殻を
つまみにしてしまいました。
しかも、

「こりゃぁ、うまい。初めて食べる味だぁ」

誠に、申し訳ございませんでした。


収録の前日に飲み過ぎてしまい、
トランプ・マジックに
ついて行けなかったこともありました。

「覚えたカードは、何でしたか? 」

というゲスト・マジシャンの問いに、私は、

「ベリー、ソーリー、忘れました」

誠に、ベリー、ソーリーでございました。


ホテルのパーティ会場で酔っ払ったこともありました。
大きな会場を真ん中でふたつに仕切り、
同時進行でふたつのパーティが行われておりました。

私は酔っ払って洗面所に行き、
戻りは間違って隣のパーティ会場に入ってしまったのです。
普通ならば状況の違いにすぐさま気付くのですが、
なんせ私は相当に酔っ払っておりました。
しかも、私は普段から
自分を疑わないという性分でございます。
ゆえに、自分の席であると確信しつつ
堂々と着席したあげく、

「あれれ、隣の◯◯さんはどこかに行きましたか?」

と、隣の見知らぬ方に話しかけていたのでございます。
隣の方も酔っておられたようで、

「◯◯、知らんなぁ。
ところで、あんたは誰だっけ?」

お互いさまながら、誠に申し訳ございませんでした。

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2010-12-12-SUN
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