MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

『続・幸福になる37の法則』
〜イタリアの伝説のマジシャン、パルテッラの知恵〜



世界一幸福と称されたイタリアのマジシャン、
パルテッラは語る。
その優美な唇で、幸福の微笑をたたえて。

「マジシャンの幸福は、観客の表情の中にあるのだよ。
 観客の反応ひとつひとつにマジシャンの幸福があり、
 不幸もある。
 ひとつひとつ、幸福を増やせるようにすれば良い。
 誰しも自分の劇場があり、
 観客に見つめられているはず。
 さぁ、君のシルクハットからは何が飛び出す?」

「ひとつのマジックを覚えたということは、ただ脳に
 ひとつの知識が刻まれたに過ぎない。
 その知識の向こうに、未だ見知らぬ海がある。
 知識の海を泳ぐことは、苦しくもあり快楽でもある。
 人間の、ひとつの大きな幸福なのかもしれないよ」

「時に、あきらめて階段を降りようとするだろう。
 でもね、階段は昇るより降りる方が危険なのだよ。
 肩を落とし、うつむいて降りるより、
 背筋を伸ばして昇る方がかっこいいに決まっている」

「仲間に褒められて、
 少しだけ得意に思っていたボールのマジック。
 それがある日、ポトリと落ちたのだよ。
 私のボールのマジックは、
 実は褒められるほどのものではなかったと
 気付かされたよ。
 まばゆい照明のもとでは、色々なものが見えてしまう。
 でも、マジシャンは決して
 照明を外れてはいけないのだよ」

「ワインとパンと、チーズ。
 これらほど、私を幸福にしてくれるものはない。
 私のマジックも、ワインとパンとチーズの味わいを
 目指しているのさ。
 観客を少しだけ酔わせ、つかの間満たしたいのだよ」

「手っ取り早く酔いたいなら、安いワインが良い。
 時にうっとりと酔いたいなら、それなりのワインをね。
 長い夜を幸福に過ごしたいなら、
 ひと切れのパンと2種類のワイン、3種類のチーズを。
 一日の終わりに、小さくて愛しい我が幸福ありだね」

「まだ若かったころ、とてもつらい思いをしてたんだ。
 すると、下宿のおばさんが
 チーズがたっぷりのサンドイッチを出してくれて、
 『悲しい時は、まずお腹を満たすんだよ』
 以来、私の魔法の言葉になったよ」

「マジシャンとソムリエはとても似ていると思う。
 私は長い年月をマジシャンとして過ごしてきた。
 これまで見てきたもの、手にしたもの、演じたもの。
 それらを言葉でも表現できなくっちゃね」

「テーブルに美味しい料理を並べるように、
 幸福なマジックをステージに並べるのだよ。
 味はいかがですか? 時々、そう問いかけながらね」

「神様の存在を信じるかって? 
 もちろん、信じてるよ。
 私の神様はマジックの神様でね。美しい女神なのだよ。
 私は彼女を愛しているし、愛されたいとも願っている。
 君も、君の理想とする神様を信じればいいのさ。
 幸福を祈り、与えられんことを願うのだよ」

「たくさんのマジックを覚えたとしても、
 マジックを知ったことにはならない。
 ひとつのマジックを完全に覚えたと思っても、本当は
 ほんの少ししか知らないのかもしれない。
 少しだけ、少しずつ。
 それが、良いマジシャンになる方法だと思うよ」

「さっさと居心地の良い仲間のところに逃げ込み、
 互いの傷をなめ合うがいい。
 そうすれば、ひと時の幸福にひたれるだろう。
 だが、その幸福はごまかしの麻薬に過ぎない。
 悲しい幸福というものなのだ」

「才能豊かな人こそ、様々に多くを与えてくれる。
 自分には無理、理解できないと思っても、
 ついて行くのだ。
 慰めてくれ、褒めそやしてくれる人々の中にいるのは
 心地良いものだ。
 だが、彼らは何も与えてはくれない。
 ただ消費するのみなのだ」

「締まりのない唇からは、何も聞こえてはこない。
 ただ、ベチャベチャという雑音のみだ。
 きりりと唇を引き締めて、
 心に浮かび出てくる言葉を語るのだ。
 それが、観客に伝えられる言葉のマジックというもの」

「知識や経験を重ねた大人より、
 まだ何も知らない子供の方が幸福そうだよね。
 私たちも時々、何も知らない子供の時間を持とう。
 子供のころの小さな脳みそで、
 大きくて不思議な幻想を思い出してみよう」

「マジック自体は、とても無機質なもの。
 喜怒哀楽なんてどこにもない。
 だからこそ、マジシャンは
 感情が豊かでないといけないのだよ。
 泣いたり嘆いたり、時に嫉妬したり。
 それこそが、人間らしい幸福というものさ」

このページへの感想などは、メールの表題に
「マジックを読んで」と書いて、
postman@1101.comに送ってください。

2010-03-21-SUN
BACK
戻る