MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

『幸福になる37の法則』
〜世界一幸福なマジシャン、パルテッラの知恵〜



かつて、イタリアにパルテッラというマジシャンがいた。
彼の微笑みは『幸福の微笑』と讃えられるほど優美で、
いつしか人々は彼を
『世界一幸福なマジシャン』と呼ぶようになった。

パルテッラは語った。
人生を幸福に生きる知恵、マジックを。

「マジシャンは突然に訪れ、唐突に去っていく。
 つまり、観客にとってマジシャンは日常ではないのだ。
 だから、楽しく、不思議なひとときなのだよ。 
 それを知らないのは、実はマジシャンなのだ。
 なぜなら、マジシャンにとってマジックが日常そのものに
 なっているから。
 マジシャンはまず、
 日常を消し去ってステージに立たなければならない。
 いつもいつも、特別な日と思えることって、
 たまらない幸福なのだから」


「マジシャンはウソの天才である。ただしそのウソは、
 すべて人の心地よい驚きのためであらなければならない。
 自分の利益のためだけにウソをつくのは、
 ヘタなマジックを続けるようなもの、
 いつかはバレてしまうよ」


「マジシャンが名誉を欲しているなら、
 与えれば良いではないか。
 これは、いわゆるボランティアなのだ。
 欲しいマジシャンに欲しい名誉を与えることは、
 決して悪いことではない。
 与えられるのを待ち続けるより、
 与えようと努める方がより幸福というものだ」


「私は、はたして方舟(はこぶね)に乗れる
 マジシャンなのだろうか?
 いつも、そう自問したものさ。
 自分がどんなに巧くても、どんなに不思議であっても、
 自身は常に選ばれる立場なのだから」


「どんなに愚かなマジシャンにも、存在意義はある。
 ダメであればあるほど、教えられることは多いのだ。
 つまり、人生のより良い反面教師になってくれるのだ。
 彼が右と言えば左を選択し、
 下と言えば上が正しいと知らせてくれる。
 人の存在意義を考えることは、
 自分の存在を知ることにもなるのさ」


「つまらないことが、あっても良い。
 ただ、やり直せば良いのだ。
 つまらないままでいてはいけない。
 つまらないままでいることこそ、
 更に自らをつまらなくさせるのだから」


「ウケないこともある。笑ってもらえない時もある。
 そんな時、自分でツッコミを入れて
 笑ってごまかしてはならない。
 芸とは、数打ちゃ当たる鉄砲ではないのだよ。
 例えれば投げ縄のようなものかな。
 まずは観客のサイズをしっかりとチェックして、
 最適な輪を投げるのさ」


「一度でもダメだったら、
 じっくりとその原因を考えることだよ。
 ダメなまま闇雲に失地挽回を試みるのは、
 愚か者のすることだ」


「椅子の数は決まっている。
 怪しいマジシャンは奇妙な椅子に。
 お笑いマジシャンはヘンテコな椅子に。
 ハンサムなマジシャンは美しい椅子に。
 空いているのはひとつ、ふたつ。
 さて、お前さんはどの椅子を狙う?
 負ければたちまちチェアー・レスだよ。
 でも、心配することはない。
 お前さんに似合う椅子を作ればいいのさ」


「マジシャンとは何かって?
 そうだね、びっくり箱のようなものだね。
 観客が蓋を開けたら、次々と不思議を繰り出すのだよ。
 途中で途切れてもいいけれど、続けることだよ。
 続けていれば、楽しいびっくり箱でよかったと
 思えるはずだよ」


「マジシャンは雄弁であるべし。
 ただ、語るために使う道具は言葉のみにあらず。
 マジシャンの五感で語るのだ。
 そのためにも、身ぎれいにしてさっぱりとして。
 がさつだったり、しつこかったりしていては、
 その指にハトは留まってはくれないよ」


「マジシャンという名の種があるのだという。
 それは、人間の中だけに蒔かれるものだそうだ。
 その種が、何年目かの春に果実のような野菜のような、
 不思議な実になるのだよ。
 甘く酸っぱく、時にほろ苦い味わいが
 ひとつ、ひとつ生っていく。
 美味しい不味いは、与えられる肥料しだいだ」


「幸福な人間(マジシャン)になりたければ、
 黙って自分を見つめるのだ。
 カードを捨てよ。決して指先の余韻に
 酔っていてはならない」


「悩みがあれば消してみせましょう。
 悲しみなど一瞬にして喜びに変えましょう。
 マジックに不可能なんてないですよ。
 まずは自分に言い聞かせるのだ」


「誰に聞いたか、マジシャンたちは
 幼い頃に何かをなくしているのだという。
 マジシャンに限らず、人は何かをなくしながら
 生きている。
 その、なくしたものの復活を信じよう。
 いつかは、なくしたもののひとつくらいは
 見つけられるはず」


「誰しも夢見る人生がある。
 マジシャンならばなおさらだ。
 ただ、夢はたちまち現実となってはくれないもの。
 夢と現実の間で揺れている秤(はかり)を均等に
 保つために、現実という皿に分銅を乗せ続けよう」


「マジシャンだからといって、
 何か特別な人生があるわけじゃない。
 だけど、マジシャンならばこその生き方もあるのさ。
 私はたくさんのマジックを考え、多くの人に見せてきた。
 それがマジシャンの幸福な仕事と思っていたから。
 マジックのすべてが良い出来ではなかったよ。
 だからこそ、小さい成功が嬉しいのだよ、
 幸福なのだよ」


「マジシャンたちは、いつも不思議を追い求めている。
 本物の不思議を探し求めている。
 本当の幻想などありはしないと知りながら。
 まるで、魚のいない湖に
 釣り糸をたれているようなものさ。
 でもね、一匹でも釣れたら、
 もう一匹もう一匹と欲張るのが
 人間でね。
 たとえ何も釣れなくても、
 いつかは釣り糸の先に何かが見えてくるはずさ」


「幸福になる方法は、
 自分の居場所を快適にすることで見えてくる。
 会社員ならば会社を、農夫ならば自らの畑を。
 そう、マジシャンならばマジシャンの居場所を」

     (つづく)

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2010-03-14-SUN
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