MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


本当はもう冬なのであろうが、どうにも暖かい日々で、
天高くマジシャン肥える秋の日々が続いている。

『食欲の秋? 冬?』


朝昼晩、三度の食事が旨い今日この頃である。
旨い旨いと食べ続けていると、
当然ながら腹が出てくる。

「腹が出ても、
 マジックには影響ないからいいね」

なんて言われたりするのだが、
やはりマジックに
出腹は不都合なのだ。

マジックは、指先の器用な人がするものと
思われている。
ゆえに、指先さえ器用であれば
肥満など関係ないと
錯覚されてしまうのだ。

ところが、人前でマジックを演じるとなると、
やはり体全体の瞬発力と持久力が必要不可欠なのだ。

観客と間合いを計りながら
一瞬のスキを突いて見えないトリックを行うのは、
例えれば短い距離をダッシュするようなものか。

30分、あるいは1時間というステージを、
ペースをコンスタントに保ち、
最後までよどみなく進行させるのは、
800メートル走とかの中距離走に似ている。

私たちは二人でステージを務めているので、
800メートルを交互にバトンを渡し合いながら
走っているようなものだろうか。

となると、食べ過ぎて腹が出ているようでは
短距離も中距離も無理というもの。

マジックのテクニック、技の切れが悪くなり、
途端にもたもたしているように見えてしまう。

また、途中で息切れしてしまうこと必定だ。
最近、持ち時間が長く感じられるのは
どうやら食べ過ぎた結果の肥満が原因のようなのだ。

しかし、今は食欲の秋である。
朝起きた時にはすっかりお腹がすいていて、
我が胃袋は早急に旨い朝食を要求してくる。

最近の朝食のお気に入りは、
軽くトーストしたパンに、
マヨネーズで和えたブロッコリー・スプラウト
(ブロッコリーの新芽です、為念)をどっさりと乗せる。

トーストには梅ペーストを薄く塗る。これが
ドライ・トマトのような酸味と旨味があって、
マヨネーズと合うのだ。

更に、薄焼き玉子を挟む。
これで、焼きサンドイッチの出来上がり。

野菜ジュースを2缶ほど鍋に入れ、
冷蔵庫にあった残り野菜を刻んで煮たスープとともに、
朝からたっぷりと、むしゃむしゃと食べる。

お昼の時間がやってきた。
米と五穀米を炊飯器に入れ、
1時間以上浸しておいて炊く。

こうすると、ふっくらしっとり、旨いご飯が炊きあがる。
サンマを焼く。
秋刀魚というくらいだから、今のサンマは格別に旨い。

最近は、レンジのプレートに敷く石が売っていて、
これで焼き魚の臭いがレンジに残らないからありがたい。

サンマを乗せ、弱火でゆっくりじっくりと焼く。
焼き魚には大根おろしが不可欠、
近所の八百屋さんの辛み大根が好きだ。

細かく刻んだオクラを納豆と合わせる。
3対2くらいでオクラが多いのが好みだ。

よく焼けたサンマに、
醤油をかけた辛めの大根おろしを乗せて口に入れる。
旨くて思わずうなるほどだ。

時々、オクラ納豆をご飯に乗せてほうばる。
オクラの香り、納豆のコクがご飯と出会う。
まさに、口中調味の妙。

夕方には、
あれほど食べた昼ご飯はすっかり消化されている。

さて、今夕はパスタを茹でようか。
八百屋さんに安い松茸があった。
おそらく外国産であろうと思われるが、
香りはなかなかに好い。

フライド・オニオン、オリーブ・オイル、
粉チーズとともに、スライスした松茸を炒める。

隠し味は納豆、細かく刻んでパスタのゆで汁、
塩を少々加えて混ぜておく。

茹でたパスタにトローリとした納豆をかけ、
炒めてしっとりさせた松茸を乗せる。

フライド・オニオン、オリーブ・オイル、チーズが
合わさった濃いめの味の中で、
松茸の歯ごたえ、味が昇りたってくる。

言うなれば、和風ボルチーニ・パスタのようなものか。

始めの一口を飲み込んでから
次を口に入れればいいのだが、
ついつい矢継ぎ早に口に運んでしまう。

松茸の香りが、チーズや納豆の匂いに
負けてしまいそうに思うのだが、
どっこい松茸は香る香る。

多めに茹でたパスタであるが、
軽く簡単に胃に収まってしまった。

ふと赤ワインのボトルを見ると、
もう半分も残っていない。

パスタが満足感、ワインが心地よい高揚感を
与えてくれたようだ。

食べて寝ると太ると言うが、
ふくれたお腹を横たえると
なんだかぼんやりとして・・・。

三度三度のご飯のどこにも
高価な食材などない我が食卓である。

ただ、今の私の胃袋は
秋の味わいを求めて鳴いてばかりいて、かく詠めり。

『 胃袋に 秋満ちゆきて 小市民 』


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2009-11-15-SUN
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