MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『続・新ネタ!』

観客に2枚のトランプを引いてもらい、
覚えてもらう。
2枚を一組のトランプの中に戻し、
何度も切り混ぜる。
全部を裏向きのままテーブルに広げる。
手にしたナイフをトランプの上にかざし、
おもむろに一枚のトランプに突き刺す。
トランプが刺さったままのナイフを引き抜き、
観客に尋ねる。

「選んだトランプは何でしたか?」

「ハートの5です」

マジシャンが刺さっているトランプを客席に向ける。
ナイフの先端に刺さっているのは、
ハートの5、である。

更に、もう一度ナイフを
テーブル上のトランプに突き刺す。

「もう1枚、ありましたよね。
 そのトランプは、これでしょう?」

しかし、今度は選ばれたトランプとは
まるで違うトランプが刺さっている。
客席から、

「あれれ、間違えているよ」

などと失笑が漏れる。

マジシャンは少しも動揺せず、再び尋ねる。

「もう1枚は、何でしたか?」

「ダイヤのキングです」

マジシャンがトランプの乗ったテーブルの
天板をひっくり返す。
すると、テーブルの裏にもう1枚のトランプ、
ダイヤのキングが貼られている。

素晴らしいトランプ・マジックである。
1枚は見事にナイフに刺さり、
2枚目のトランプは失敗と見せながら
最後に鮮やかに当ててみせる。

だが、何となく観客の反応が鈍い。
1枚目のトランプが当たっても
2枚目が意外やテーブルの裏にあっても、
観客にいつもの笑顔が見られないのだった。

「すごく不思議で鮮やかなのだが、
 いつものナポレオンズの
 爆笑マジックじゃないなぁ」

観客の顔が、そう語っているように思えた。


そこで、次のマジックを急遽変更して、
野菜当てマジックにしてみた。

大きなお盆に、
小松菜、インゲン、オクラ、トマトが乗っている。
観客にどれかを選んでもらい、
それをテーブルに乗せ厚手の布で隠してしまう。

観客に背を向けていた相方が、
布に隠された野菜を透視するような仕草を続ける。
そこで、私がつぶやく。

(1)小松菜が選ばれた場合。

「これが分からないとは、困っちゃうなぁ。
 こまっつなぁ、コマツナァ」

(2)インゲンが選ばれた場合。

「もっと集中しなさい。人間は集中力です。
 にんげんは集中、インゲンは集中」

(3)オクラが選ばれた場合。

「おいおい、いつまで悩むんだよ。
 いくらなんでも遅過ぎる。
 オクラなんでも・・・」

(4)トマトが選ばれた場合。

「何をそんなに戸惑っているのか、
 とまどっているのか、トマトっているのか」

相方は私の言葉のキィ・ワードに反応し、
野菜を次々と当てていった。
観客に満足の笑顔が浮かんでいた。
満員の観客の笑顔を見ながら、私は心の中で思った。

「そうか、私たちの観客のニーズは、
 高価な道具より不思議なマジックより、
 馬鹿馬鹿しくも面白いマジックなのだ」

今頃になって気付いたのであった。

次回はフルーツ当てを予定している。

「こんなのが分からない?
 そんなバナナ・・・」

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2009-06-21-SUN
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