MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。


『名物マジシャン』

こまった困った。

『日本最高齢のマジシャン』と題された
ディスクをいただき、さっそく見てみた。
御年97歳のマジシャンは、
やはり年代物のタキシードを着、
シルク・ハットをかぶっている。
アシスタントの男女もいるのだが、
お二人とも相当な高齢だ。
メインのマジシャンが97歳だけに、
アシスタントたちも7、80歳くらい、
日本のマジック界も高齢化が著しいのだろうか。

ご自宅の仏間をステージにして、
いよいよマジックが始まった。
箱にハトを入れて
ポケット・モンキー(ハトもサルも本物)に
変えるのだが、最初に箱の中を見せないため
不思議さは皆無。
続いてシルク・ハットに
卵を割り入れようとするのだが、
ほとんど外にこぼしてしまう。
マジシャンはそれに動揺することなく、
シルク・ハットをそのままかぶってしまう。
再びシルク・ハットを脱ぐと、生卵が消えている。
しかし、始めから卵のほとんどが入ってないのだから
驚きようにも驚けない。
帽子を脱いだマジシャンの頭にハトの羽が付いていて、
次の展開を予想させる。
すると案の定、シルク・ハットからハトが出てきた。
最初に出てきたポケット・モンキーは仏間を逃げ回り、
ハトはどこかへ飛んでいってしまった。
マジシャンはかまわずアシスタントのお婆さんの顔に
箱をかぶせ、剣を刺す。
しきりに箱の中から
「痛い、先生、痛い」
という声が聞こえてくる。
かまわず剣は刺され、更に箱の中に水を入れられる。
箱から剣を抜くと、
水浸しになったお婆さんが出てくる。

なんともしょうもないマジックである。
しかし、これが面白い、抱腹絶倒なのだ。
私はしばし敗北感に襲われた。

名古屋、大阪、福岡など、
日本各地にアマチュア・マジシャンの組織があり、
多士済々、多くの名物マジシャンが存在する。
そのお一人、美容院を経営するマジシャンは
美容室にマジック用のステージを作ってしまった。
カットのための席はたった2席しかなく、
マジックを見るための席は6席なのだ。
髪をカットするのもそこそこに、

「さぁ、こちらの席に移って
 マジック・ショーをお楽しみください!」

客は困惑しきりである。

和傘をたくさん出すマジシャンも登場した。
着物のあちこちに大量の傘を隠しているため
歩きにくいらしく、ステージ中央に到達するまで
時間のかかること。
やっと中央に立ち、大きな風呂敷を広げては
中から傘を取り出す。
しかし、それらの傘が袴の中から出てくるのが
観客に丸見えになっている。
傘が出る度、袴が細くなっていく。
途中、傘が袴に引っかかったらしく、
開いた傘が腰のあたりにぶら下がったまま、
それでもマジックは続けられる。


私は、いただいた名物マジシャンの映像を見て
笑いながら、今本当に面白いマジシャンといえば
アマチュア・マジシャンなのかもしれないと
思い始めていた。

近い将来、これらのマジシャンを
ぜひとも皆さんに紹介したいものだ。
ただ、ほとんどの名物マジシャンの方々が
ご高齢である。
私は、この企画の実現を急がねばならないだろう。

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2009-03-08-SUN
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