MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

『秘密の漫画』


ちょっと前まで、
マジシャンだけを扱った漫画本が出るなど、
夢にも見なかった。
ところが、とうとう見つけてしまったのだ。
フラリと立ち寄ったコンビニの本棚に。
『マジシャンの秘密』と題された
ちょっと厚めの文庫本のようなコミック誌。
多くが売れてしまい、残った一冊なのか、
それとも始めから一冊しか置いてなかったのか、
とにかくポツンと残っていた一冊。
表紙に大きく描かれているのは、あの◯ロだ。
次に大きいのは◯功さん、
続いて◯リックさんのお馴染みのポーズ。
ふむふむ、なるほど秘密を多く抱えていそうな
マジシャンばかりだ。
我々◯ポレオンズは、
表表紙にも裏表紙にも描かれてはいない。
そりゃそうだ、
どう見ても秘密などかけらもなさそうな芸風だもの。
唯一、どうしてあの芸で
30年間もマジック業界で生きて来れたのかという謎が、
謎といえば謎なのだが。
裏表紙に、マジシャンたちを飾る文字が踊っている。
『マジックの革命者・◯ロ』、
『世界のイリュージョニスト・◯功』、
『超魔術師・◯リック』。
ふ〜む、確かに彼らに相応しい称号を与えられている。
やはり、
『大した芸もないのに30年・◯ポレオンズ』では、
裏表紙に掲載もできないのだろうか。

カラー・グラビアを見ると、
マジシャン・◯ロが
テレビ・スペシャルで演じたマジックのカラクリが
数点暴露されている。
首がストンと落ちたり、支えもなしに後ろにのけぞる
(どうやら、◯ロ・バウアーというらしい)マジック、
最後にあの有名になった
ハンバーガー・マジックのトリックが、
事細かに解説されているのだ。
私はひと文字漏らさず読み進んで行った。
そうか、そうだったのか‥‥。
マジシャンではあるがトリックには疎い私は
思わず膝を打った。
実に分かりやすい解説に、
このコミックに感謝の念すら浮かぶのであった。
続いて、◯ロのこれまでの人生のようなものが、
物語風に描かれていた。
マジシャン以外あまり知らないであろう、
彼の本名、生い立ちなども書いてある。
となると、やはりマジック業界にいた人物が
ストーリーを書いたのだろうか。
ここに書かれていることが本当かどうかは分からないが、
デタラメと断じることもできない。
この漫画の中では、◯ロは米国ロサンゼルスで生まれ、
沖縄で育ったということになっている。

続いて、なぜか私と同郷、
岐阜の生まれの◯リックさんの物語。
下積みの長かった◯リックさん、
成功までの長く険しい道のりが真に迫る。
脚光、裏切り、失敗、挫折、復活、
まるでパンドラの箱のような運命だったのか。
今も活躍をされている◯リックさんの精神の安寧を
祈るほかはない。
◯リックさん・ストーリーの最後には、
数点のマジックがタネ明かしされている。
中にはとても参考になるマジックもあり、
すぐに試してみる私であった。

さてお次に控えしは、かの◯功さんである。
そうかぁ、◯功さんは
若干19歳で初代・引田◯功さんの名前を継いだのか。
そりゃ大変でしたねぇ。
初代・◯功さんの弟子として、
◯ポレオンズの名前が出てきた。
なんでも、芸風が違っていて
初代・◯功先生の名前を継げなかったとか、ははは。
それにしても、マジック関係者ですら
ごく一部の人間しか知らないはずの
◯功さんの過去の出来事が描かれていて、
私は密かに動揺したりした。
様々な誹謗中傷を乗り越えて、
世界で認められた◯功さんの成功、与えられた油田、
瞳より大きなダイヤモンド、22億円の宇宙旅行、
携帯電話50台など、
いわゆる◯功伝説が描かれている。
最後に、大掛かりなイリュージョンの際
負ってしまった大怪我も、克明に描かれている。
私も、代表作の『あったま・ぐるぐる』で
首の筋を痛めてしまったことがあったが、
人に悟られまいといつもより余計に回したのであった。

コミックは、テレビで放送された
マジックのいくつかについて、
数々の疑問,疑惑を投げかけている。
ハンカチからハトが出たり、
金属の輪が繋がったりという従来のマジックと違って、
テレビで観る最近のマジックは
信じられないような不思議現象が起きている。
その不思議が、
本当にマジックのトリックだけで演じられるのか、
それともカメラ・トリックやサクラなのか、
するどく検証していて笑えなくなる内容だ。
その後も、タネ明かしを交えて漫画は続く。
「さぁさ、寿司食いねぇ酒呑みねぇ。
 で、マジシャンてぇのは、他に出てこないのかい。
 ほら、他に忘れてる大物‥‥」
くらいに待ってやっと出てきたのが◯ポレオンズ。
これまでのキャリアをごく短く描いている。
日本奇術協会の広報委員であるという、
実に地味な情報も書いてあった。

私はさっそくマネージャーにこのコミック本を見せ、
「いったい、こんなに内部情報に詳しい原作者は
 誰なんだろうねぇ」
と尋ねた。するとマネージャーはきっぱりと、
「こんなに詳しい人って、◯石さん、あなたでしょ」
違う違う、私じゃないってば。

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2007-11-29-THU
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