MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

2006年、どうか今年もよろしくお願いします。
マジシャンのお正月、
今年は横浜の『にぎわい座』で始まりました。
チケットは完売、満員のお客様、
まずはめでたいスタートでありました。
そんな新年とはいえ、
いつものように出掛ける道すがら思う、

『新春おめでた!? 雑記』

今年の冬はかつてないほど寒さが厳しく、
初仕事にはかなりの厚着で出掛けた。
つい先日買ったばかりのブーツが、
この寒さからしっかりと足元を守ってくれている。
商店街はほとんど閉まっている。
途中にある靴屋さんの
ショー・ウインドウに飾ってある靴を見てみる。
靴はもう充分にあるのだが、
靴を見るとついつい近づいてしまう。
つまり僕は靴フェチなのだ。
学生のころ、かなりしぶとい貧乏神に取り憑かれていた。
なけなしのお金は食べるものに費やされて、
着るもの履くものなどに回すお金など皆無だった。
春夏秋冬、暑くても寒くてもゴムのサンダルで通していた。
その反動は凄まじく、
今では靴屋さんを素通りできない人間になってしまった。
最近では、電車の中で前に座っている人の靴まで
気になるようになってしまった。
「この靴は好いなぁ、どこのかなぁ?」
「これは少し磨いた方が良いのでは?」
ジロジロと見定めに入ってしまう、
僕はすでに変態なのだろうか。

ちょっと前まで空き地だったところが、
コイン・パーキングになっている。
『一泊1500円』の看板が見える。
以前、岐阜に住んでいる姪が友達と上京してきた。
買い物にお金を使いたいから、
泊まるところは安くあげたいとのことであった。
新宿で待ち合わせ街を歩いていても、
安く泊まれそうなところばかり探している。
すると、姪の友達が叫んだ。
「ねぇ! あそこに『一泊1200円』て書いてあるよ!」
そこは駐車場なんだけど。

駅の近くまで来た。
以前、このあたりで「◯◯を救う会」という
黄色いのぼりを立てて募金活動をやっていたことがあった。
そうだ、この問題も長く続いている、
当事者の皆さんはさぞかし辛かろう。
僕は心ばかりのお金を出して、
募金箱を抱えているおばさんたちに近づいた。
だが、お金を箱に入れた瞬間から、
なんだかこれまでに募金した時とは違う感覚が残った。
その違和感が何かは分からぬまま、その日は過ぎた。
数日後、テレビでその募金活動が
実はインチキだったことを知った。
寄付されたお金のほとんどが使途不明になっており、
募金箱を抱えたおばさんたちは
ただのアルバイトだったのだ。
僕の寄付も、
きっとあのおばさんたちの昼飯代になったのだろう。
お金を入れた時の違和感、それが何だったのか、
インチキだったと知った瞬間に気づいた。
箱にお金を入れた時、
おばさんたちは決して僕と目を合わさなかったのだ。
人を騙して食べるって、
いったいどんな味がするのですか?

駅前のケーキ屋さんに寄った。
仕事先への年賀にしてみようか。
さて、どれがいいかな。
横に、おばぁさんと孫と思われる二人が立った。
「ねぇ、どれがいいの?」
おばぁさんが孫に訊いた。
すると孫は小さな指で大きなケーキを指したではないか。
おばぁさんは毅然と言い放った。
「そんな大きなのはダメですよ。
 こちらの切り身にしなさい」

今年もあれこれあるだろうけど、
どうか平穏でありますように。

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2006-01-12-THU

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