MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

いつからか、落語を聴いて眠るようになった。
同じ噺を何度聴いても面白く、決して飽きることが無い。
そんな落語を聴いていてふと思った。
はて、落語に出てくるようなことが実際にあったような。
そこで今回のお題は、


『夢』


「ライフ イズ マジック」というコーナーをいただいて、
もう何年になるだろう。
駄文ながらも、我ながらよく書き続けてきたと思う。
だが、いつもいつもスラスラと書くことが浮かんできて、
週に一度は更新、とはいかないものだ。
なかなかテーマが浮かばないこともあるが、
書きたいことはたくさんあるのだ。
例えば同業者、つまりはマジシャンについては、
まだまだ書いていない事実も多く存在している。
ただ、その事実をそのまま書いてしまうと
各方面のマジシャンからきついお叱りを受けることになる。
ならばそれらのマジシャンが喜んでくれるような内容、
つまりは賞賛の文章を書けば良いのだが、
誉め言葉を連ねた文章は読み物としてあまり面白くない。
やはり悪口の方が断然面白くなったりするのである。
別に原稿の締め切りがある訳ではない。
また催促があることもない。
しかし、更新できない期間が長くなると、
なんだか落ち着かない。
自分で勝手に焦ってしまうのだ。
ひょっとして誰かが代わりに更新してくれてないかなぁ、
などとパソコンを立ち上げてみるのだが、
そんなことがあるはずもない。
それでもなんとか原稿を書いて送信し、
それが掲載される喜びはまた格別である。

環境を変えれば案外スラスラと書けるかもしれない、
私は所属している事務所に向かった。
事務所には私が使っているのと
同じタイプのパソコンがある。
また、いつも厳しいマネージャーに睨まれつつならば
効率も上がるというものだ。
思った以上にあれこれ文章が浮かんできた。
これは良い、これまでの苦悶がウソのように
アッという間に書き上げることが出来た。
バンザ〜イ、良かったぁ。
「お疲れ様です、小石さん。
 原稿が書けて良かったですね」
不思議なことに、あの厳しいマネージャーが
今日は優しい言葉を掛けてくれた。しかも、
「良かったらビールでもいかがですか?」
ありがたやありがたや、
さっそくグビグビといただいてしまった。
原稿を書いた後の一杯、美味いなぁ。

「小石さん、小石さんってば!」
いかんいかん、ビールの酔いで
すっかり眠ってしまっていたらしい。
「いやぁ、ごめんごめん。
 なんだか良い原稿が書けたもんだから、
 つい嬉しくって酔っぱらっちゃったよ」
私は照れながら応えた。
するとマネージャーは妙なことを言う。
「なに言ってるんですか、
 小石さんは事務所に来てパソコンの前に座ってすぐに、
 『なんだかのどが渇いて原稿が書けないなぁ。
  冷蔵庫のビール、飲んでいい?』
 なんて言って、立て続けに3本飲んだんですよ。
 そいですぐに酔っぱらって寝たんですよ。
 それで原稿なんていつ書いたって言うんですかっ!」
私は慌ててパソコンの画面を凝視した。
無い、確かに書いたはずの文章が一文字も無いではないか。
「さては原稿を書いた夢でも見てたんじゃないですか。
 はぁ〜、情けない」
私は恥ずかしさと悔しさでいっぱいになった。
しかし、反論する言葉などあるはずも無い。

心を入れ替えて再びパソコンに向かった。
今度こそ、しっかりと原稿を書き上げねばならない。
私は真剣にキィを叩き続けた。
そのかいあって、なんとか原稿が出来上がった。
私は安堵のため息をもらした。
「小石さん、本当にお疲れさまでした。
 どうです、ビールでノドを潤しては?」
マネージャーが缶ビールを差し出してくれている。
そういえばノドがカラカラだ、
ありがたくいただきましょう。
私は適度に冷えている缶ビールを手にした。
だが、
「いや、呑むのはよそう、また夢んなるといけねぇ」


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2005-05-29-SUN

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