MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

芝居をする、演じるというのはやはり難しい。
マジックをする時とはまるで違う緊張を味わったりする。
でもその緊張のなかで演ずる快感を、
少しは分かる気がするような。
嬉しいけどやっぱり恥ずかしい、


「役者になったマジシャン」


「刑事」
下町の銭湯で起きた盗難事件。
そこに登場して、証拠の品を空の箱から
いきなり見事に出す
(そんな刑事なんている訳ないのだが)という役柄。
すごい大御所の役者さんとの掛け合いもあり、
本読み(リハーサルみたいなものです)から
緊張してしまった。でも、本番は一発OKになった。
今その映像を見てみると、セリフが棒読みで哀しい。

「キャバレーのボーイさん」
酔客がマッチを持ってこいと呼んでいる。
ただちに駆けつけ客の手にしたタバコに念を送る。
すると、タバコが自然発火する!
喜んだ客にチップをいただきウッシッシ、てな役。
この変なボーイさんという役が、
他のどの役柄よりも自分に合っているという事実が
これまた哀しい。

「レコード屋の店員」
古い流行歌が事件のキィ・ワードになっていて、
中古レコード店でヒマそうに働いている。
そこへ刑事が訪ねてきて、
ある歌のレコードを捜しているという。
そこで鮮やかな手つきでパッパッパとレコードをチェック、
見事に捜しあてる。
こういう場面、普通は編集などで加工するのだが、
マジシャンだからやれるだろうと思われてしまった。
そりゃトランプとかであれば手慣れているが、
レコードはマジックで扱った経験がない。
さて困ったと思いきやさすが相棒のボナ植木、
けっこう鮮やかそうにレコードを操ってしまった。
その横でボンヤリしている役(どんな役柄なんだよ)が
僕・・・。

「浅草の芸人」
よっしゃこういう役柄ならば思いっきり濃い演技をしよう、
などと考えていたらエキストラの客に
いつものネタを見せてくれればOKとのこと。
結局おなじみ「頭ぐるぐる」をやっただけ。
役柄はナポレオンズ(?)だったのだ。

「旅まわりの劇団に所属する手品師」
出番はちょこっとだけ、
共演の皆さんにマジック指導するのが
メインの仕事なのであった。
座長役の方とその娘役に指導することになり、
相棒のボナ植木は娘役の女優さん担当をサッサと宣言、
僕は座長役の大御所役者さん担当になってしまった。
二部屋に分かれて指導が始まった。
隣の部屋から、女優さんの明るい笑い声が聞こえてくる。
それを聞きながら、
かなり手技の苦手そうなベテラン役者さんを
必死にヨイショしている僕であった。

「魔術劇団の下っぱ手品師」
暗い過去を背負った謎の美人マジシャンが
座長を務める人気魔術団。
そこでお笑いマジックをするコンビという役。
そのまんま?
ギャグ・マジックが受けないと互いのせいにしてしまう、
これまたそのまんま?

「スリ」
「こちらはスリの指導をしていただく、
 小石さんです」
人聞き悪いご紹介であるが、仕方ない。 
スリといえば手先が器用、器用となればマジシャン、
てな連想からかご指名にあずかる。
でもスリの手口とマジシャンの技術は全然違います、
と言いたいのだがまるで同じだったりして。
指導はもちろん、スリ団のペーペーの役も回ってきた。
ただ、ペーペーだから失敗ばかりする役。
放送を見ると、なんだか生き生きとしていたなぁ。

「時代劇」
NHK「金曜時代劇」。
とある見世物小屋の鳴りもの役
(出ばやしなどを担当する)であった。
小屋では手妻師(手品師の古い言い方)の興行が
行われていて、
まさにその最中に殺人が行われたという脚本である。
この作品の原作者は泡坂妻夫氏
(マジシャンとしても有名で、創作奇術多数)で、
始めはただマジック・シーンの指導だけだったのに、
ひょんなことから出演することになってしまった。
「へぇ、太鼓を鳴らしてたなぁ、
 あっしでございやす」
親分の厳しいお調べに答えるセリフは、
初めての江戸言葉。
何度も稽古したので、しばらくクセが抜けなかった。
「へぇ、ちょいとナポレオンズでございやす」

「いかにもマジシャン」
世の中の人々のイメージするマジシャン、
それがこのドラマの監督さんの要望であった。
さっそく発注しましたよ、
スパンコールでキンキラリンのえんび服、
あやしげな厚メイク。
「ウァハハハ、イ〜ヒッヒッヒ。
 さぁさ恐ろしい恐怖のマジックだぁ、ウィ〜ヒッヒッヒ」
すぐに監督がやってきて、
「あのぅ、もうちょっと自然にならないかな?」

「美しいヒロインの恋人」
彼女が困っていると、
必ず現れて得意の華麗なマジックで解決!
ホッとする彼女を抱きしめる。
そんな役を一度でいいからやってみたい。

2002-08-01-THU

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