MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

「私家版・千夜一夜物語」


『見栄』

クリーニング屋さんで、
「ずいぶん大きいシミだねぇ。
 いったい何のシミ?」
「はぁ、昨日食べたステーキが・・・」
ごめん、実はモスのテリヤキ・バーガーです。


『免許』

運転免許の最終試験、緊張していた。
ミスなしでゴール、まではよかった。
しかし、ゴールを通過したまま走り続けてしまった。
合格にしてくれた。


『検問』

免許取りたてのころ、初めて検問に出くわした。
「どちらまで行くの?」
「東京です」
検問を受けていたのは渋谷だった。


『餃子』
ある地方のホテルに泊まっていた時、
夜中に突然餃子が食べたくなった。
外へ出てあちこち探した。
遠くにボンヤリとネオンが見える。
「餃子のみせ」ワ〜イワ〜イ、あったぁ!
「純子のみせ」だった・・・。


『ロープ』

出番直前なのにベルトが見つからない。
いいや、どうせ見えないし。
ネタ用のロープを巻いた。
さて生放送が始まり、
「では、上着を着替えていただきましょう」
聞いてないよ、着替える?
帰ってビデオ・チェックした。
ベルト代わりの、ピンクのひもがしっかりと・・・。


『抱きしめたい』

酔っ払って、見ず知らずの人に抱きついた。
その人は激しく腕を突っ張って拒絶をした。
ハッと我にかえると、
知らないヒゲ面の男が目の前にいた。
顔面そう白だった。


『腹の虫』

空腹でお腹がキュルキュル鳴っていた。
隣りに立っていたアナウンサーが笑いだして
NGになった。
ごめんごめん。


『がいつ?』

「画一的」をずっと「がいつてき」だと思っていた。
「それってさぁ、やっぱ『がいつてき』なんだよ」
なんて言っていた。
誰かに、早く訂正してほしかった。
ついこの間、気がついた。
(「逸品」を「めんぴん」だとも思っていた)


『大物』

昔、いそうろうしてた頃。
トイレに入ろうとしたら、
次男の康二さんが入っていた。
お尻まる出しなのに
「やぁ、もうちょっとだよ。待ってて」
堂々としてて、ニッコリさえしていた。
こっちが恥かしかった。


『不肖の・・・』

初めてメガネを買いに行った時、
フレームを親父が選んでくれた。
「うん、これがよく見える」
と言った僕。
まだレンズは入ってないのに。
親父は心底、情けなさそうだった。
(でも、見えるような気がしたんだよ)


『謎のヒモ』

ローマに行った。
ホテルのお風呂に、ヒモがブラブラしていた。
何だろうと思い、何回も引っ張った。
お風呂で気分が悪くなった際、
緊急に知らせるためのヒモだった。
しかし問題なのは、
あれほど引っ張ったのに誰も来なかったこと。
ローマは謎に満ちている。


『おじさん』

夜行列車に飛び乗った。
さぁしばし眠ろうと自分の席に・・・。
おじさんが寝ている。
「おいっ、おじさん、ここは僕の席だよ。どいて!」
「あぅ、ごめんごめん」
おじさんはヨロヨロとどこかに消えた。
しばらくして車掌さんが来た。
「あれっ、この切符は次の夜行のですよ」
なんと、間違っていたのはこっちだった。
しかし、あのおじさんは二度と戻っては来なかった。


『占い』

“腕の良いマジシャン”と“まぁまぁのマジシャン”と
“ヘタなマジシャン”が、評判の占い師に見てもらった。
占い師は、トランプの神様にお伺いをたてるのだと言う。
はじめに、“腕の良いマジシャン”が占ってもらった。
「ふぅむ、トランプの神様がおっしゃるには、
 貴方はどんどん成功するでしょう」
次に“まぁまぁのマジシャン”、
「ふぅむ、トランプの神様がおっしゃるには、
 貴方が努力すれば道は拓けるでしょう」
最後は“ヘタなマジシャン”です。
「ダメかもねぇ」
「えっ、そうトランプの神様が言ってるんですか?」
「いや、さっきあんたのマジックを見たんだよ」
(このお話は、あまりの毒舌で
 世間をワザと狭くしている名人、
 春風亭勢朝師匠からの無断借用です。
 ちなみに師匠は実在の落語家3人の実名でやっており、
 怖くて笑えません)


『保護本能』

知人に背の高〜い女性がおります。
ある日のこと、彼女は接待を命じられ、
終了後取引き先相手を駅まで送ることになりました。
薄暗い路地で、
いきなりその男性(小柄でした)にキスをせまられました。
すると彼女はとっさに(無意識のうちに)
背伸びをしたのです。
相手のくちびるは10cmほど遠ざかり、
事なきをえました。
まるでカメレオンが色を変えるように、
トカゲがシッポを切るように、
ダンゴムシがクルリと丸まるように。


『水深』

麻布のとあるバーで酔っ払った男、
フラフラと裏の駐車場に出てバタリと眠ってしまった。
幾度か寝返りをうつうちに、
水深5cmの水たまりに顔が入ってしまった。
そのまま数分、あわやというところで目が覚めた。
その後遺症で記憶力の低下が著しいと嘆くが、
だれも同情も信用もしない。


『このままでは・・・』

円楽師匠と北海道に行った。
函館から車で3時間以上かかる町で師匠の独演会があり、
我々も同行したのだ。
円楽師匠は車での長い移動が苦手な方です。
案の上、2時間もすると師匠のイライラが
目に見えてくるようになった。
「いったい、いつまで乗ってるんだぁっ!」
師匠の怒声が響きわたった。
車内の空気が凍りついた。
と、再び師匠の声。
「このままではロシアに着いてしまう。
 ガッハッハッハ」
面白い、面白すぎる。
ある昼ごはん時、頼んだものがなかなか出てこない。
「いったい、いつになったら食わせるんだぁ。
 このままでは夕飯になってしまう」
円楽師匠ゴッコは楽しい。


『長寿』

大好きなSディレクターがつぶやいた。
「俺ってさぁ、絶対ガンで死ぬんだよ。
 96才で」
充分でしょ。

2002-01-17-THU

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