MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

「病めるマジシャン」

あまりにあちこち痛いので、マッサージに行きました。
色々揉んでもらった後、
その人に替わって主任が仕上げてくれると言う。
意外に若い主任があちこち揉んで言う。
「あなたの場合、右足が少し短いです。
 これは骨盤が曲がっているからですね。」
困惑を隠せない僕は、
「そう言えば椅子に座ると、
 右足だけかかとが浮くんですよ。」
などと情けない事実を告白してしまいました。
大いに納得する主任が、
「大丈夫です。これからすぐ治します。」
主任はいきなり仰向けの僕の両足を組ませ、
グッと体重を乗せた。
僕の体のどこかがボキボキと音をたてました。
「これで両方、同じになりました。」

家に帰り、さっそく椅子に座ってみた。
な、なんと、右足は浮いたままだった。
しかも、左足のかかとまで浮いているではないか。
同じ長さにはなってるはいるが、まさか短い右足に合せた?
おいおい主任さん、長い方に合せてくれよ〜!

朝、鏡を見て驚いた。なんと喉仏のあたりに
大きな赤い打ち身のような痕がある。
しかし、圧してみても痛みがない。
なんだろう? 普段とても元気な僕は、
ちょっとした身体の異変に
過剰に反応してしまう癖があります。
怖々、皮膚科の病院を訪ねました。
「先生、これは打ち身ですか?」
「打ち身だねぇ。」
「でも、痛くないんですよ。」
「じゃ、すぐ治るよ。」
「なにか薬は?」
「ほっとけば自然に消えるよ。はい、ご苦労さま。」
診察は2分で終了、
料金は国民健康保険適用により840円だった。
高いような、安いような。
アホらしいやら、ホッとしたやら。

10年程前にアフリカの某国に行った際、
左手に外傷をした。
帰国した後、その傷を見た知人が、
「破傷風では?」
などと言う。
すっかり恐くなった私は、
すぐさま近くの外科に行きました。
「先生、きっと破傷風だと思うんですが。」
先生は、傷を見るより私の顔をじぃっと見て、
「破傷風の人は、歩いて病院には来ない。」

お知り合いの先生が、CTスキャンを導入されました。
「検査してあげるから、おいで。」
有り難いお言葉に、直ぐさま出掛けたのでした。
真新しいCTスキャンに、
さっそくパンツ1枚になって横たわったのです。
ガラス張りのスキャン室の外から、
先生はリモート・コントロールしつつ、
「ねぇ、ちょっとすまないけど
 パンツも脱いで寝てみてくれる?
 ちょっと変な影がさ。」
などと言う。
先生の指示です。
かなり恥ずかしい姿になって横たわりました。
すると先生が部屋に入ってきて、
パシャッとポラロイドで僕の全裸を写したのです。
「お〜い、小石さんのヌード!」
うら若い看護婦さんに見せているではありませんか。
しかもウケている・・・。
神経症になりました。

中学3年の時、盲腸の手術をしました。
ご存じですよね、下腹部の剃毛という、
大変に恥ずかしい処置を看護婦さんにしてもらいます。
中学3年生にとって、
気絶する程の羞恥の極みなのでした。
しかも、何故かインターンと思われる数人が見学をする
公開手術のようでした。
「こんな事なら全身麻酔でやってくれ〜!」
僕の心の叫びなんて、誰にも届くはずがありません。
しかし手術は無事終了し、
4日程の入院も過ぎて退院となりました。
先生はにこやかに母に告げます。
「すっかり良くなりましたよ。」
僕は再び心の内で呟きました。
「先生、身体はすっかり良くなったけど、
 精神の苦痛は癒えてないんですけど。」

ある内科の先生から聞いた話です。
いつもの診察である男性患者に、
「はい、大きく口を開けて、あ〜ん。」
先生はコンセントからいつものように懐中電灯を抜いて
照らそうとしました。
しかし、手にしているのは先生の電気かみそりだった。
「いかん、威厳を保たねば。」
先生は、何食わぬ顔で男性のヒゲを剃ったという。
う〜む、医者の威厳はむしろ失われたと思うけど。

2001-06-18-MON
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