MAGIC
ライフ・イズ・マジック
種ありの人生と、種なしの人生と。

手品のようなマジック?

先日ニュースを見ていたら、
「まるで手品のような・・・」などという見出しが
画面に出てきたではありませんか。
その後コマーシャルになってしまい、
「いったい、どんな事件なんだ? 」
期待してるのか怖れているのか、
複雑な思いでニュースを待ちました。
食い入るように見たわりに
事件は釣り銭サギのようなもので大したことではなく、
「まるで手品のような」という表現だけが
頭の中をクルクルと廻り続けるのでした。

この事件の手口が手品のトリック、やり方と
まるで違うものだったら、
「おいおい、この表現は人聞き悪いよ」
くらいで終わっていたのですが、似てたんですよ、
もう悲しいくらいそっくり。
否、手品そのものの手口(この言葉、嫌いです)
だったのです。
これが辛い。
ただでさえ信用の薄い我が業界、
ますますサギ師やスリとの境界線が
ぼやけてしまうではありませんか。

「お灸をすえる」「坊主丸もうけ」などという表現に
クレームが付いたりしました。
関連する業種の人々にとって
不愉快な表現であることは間違いありません。
一方で、行き過ぎた言葉狩りとの反論もあります。
さて、「手品のような」という表現に
クレームを付けるのは簡単でしょうが、
「では、このサギの手口と手品のトリック、
 やり方の違いはあるのですか?」
などと問われたら、
「ありません、同じです」

ちょっと前のことです。
コンビニに寄りました。
ミネラル・ウォーターを手にとって、
そのまましばし雑誌をパラパラしました。
欲しいのがなかったので店を出ました。
ペットボトルを手にしたままレジを素通りして。
100メートルほど歩いたところで、
「うわ〜、なんじゃこれはぁ〜」
やっとお金を払い忘れたことに気づいたのです。
ペットボトルを持っていることすら意識外の有り様。
慌てて店に戻り、レジで支払いを済ませました。
(こんな経験、皆さんありますよね。
 ひょっとして僕だけなんてことは・・・)

もしも店員さんが追いかけて来て捕まったとしたら、
僕のうっかりを信用してくれなかったとしたら、
なんて考えるとゾ〜ッとします。
「手品師、タネを見破られ御用」
などという見出しの3面記事になってしまうに
違いありません。
だってそれがえん罪でも、事実でなくても、
記者だったらこんな見出しは使ってみたいと思うはずです。
(違う? )
こんな悪夢だけは避けたいものです。
地位とか名誉なんてレベルではなく、
あまりに情けなさ過ぎる。

ずいぶん昔のことです。
ラスベガスからの帰りに、
ある同行のおじさんが僕に言いました。
「無修正ポルノを買ったんだけど、
 持っていって税関を通過してよ。
 芸人さんだから万が一捕まってもシャレで済むでしょ」
済むわけないだろっ!!!

万引きやサギなんかで捕まってはいけない職種、
それが手品師という職業なのです。
(いやまぁ、どんな職業でもいけませんが、
 特にということで)

ある手品師の実体験。
電話の男は熊本の造り酒屋の3代目と名乗り、
その手品師の大ファンとのこと。
来月に主催するイベントに出演を依頼したいのだが、
今赤坂に宿泊しているのでまずは相談を近くで、と言う。
申し分のないギャラに釣られて指定された料亭に向かい、
突然の宴席となった。
不味かろうはずのない料理と、
3代目持参という酒を存分に楽しんだ。
「ちょっと電話を」
フラリと部屋を出ていくスーツ姿の紳士が
二度と再び戻ってこないなどどは、
想像すら出来なかった・・・。

「普段ダマし続けているバチが当たった、
 なんて口の悪い仲間が言うけどね。
 ギャラに釣られたのは事実だしね。
 ダマすよりはダマされる方が良いはずだし。
 それにさ、やっぱり手品師がダマされた、なんてのは
 カッコ悪すぎる。」

ダマしてもダマされてもいけない、
それがマジシャンの生きる道。

P.S.マジシャン騙すと3代タタるらしい。

2001-04-10-TUE

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