HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN
ひとのしあわせを読む仕事。
手相観 日笠雅水さん
第7回 いろんな仕事を経験しながら、この職業を決めるのに7年考えつづけました。
糸井 細野(晴臣)さんはどうですか。
日笠 あの、私、細野さんがまだ28だったときに
「おじさん」だと勘違いしてたことがあって
今考えれば、すごく失礼しちゃったと思って。
糸井 (笑)。
思えば少年のような人ですよね。
日笠 そう。本当に子どもなんですよ。
すーごい子どもだから、青年がないの、中間が。
子どもとおじいさんのあいだ。
糸井 今になってみたら思うでしょ、
小学生みたいな人だなって。
日笠 そう。だけど、あのときはね、なんかもう‥‥
糸井 声低いしね。
日笠 声低いし、口の周り黒いし、
もうおじさんだなとかって思ってた。
糸井 でも、細野さんって、このあいだ、
マーコもパンフレットに書いてる
あのDVD見たんだけど、
昔から本当に素直な人だったんだね。
日笠 “素直ないい子”ですよ。
糸井 で、ロックでもないしっていうか。
日笠 (笑)。
糸井 何ていうの、丸のまんま出せる鷹揚さがあるね。
日笠 そう。素直だし、口ごたえしないし、
暴力性ないし、“いい子”ですよ。
ウソつかないし。
本当にかわいい子だと思います。
あの人はかわいい天才。
糸井 そうですね。いや、改めてこれだけ
年月が経ってから、
この人はいい人だったんだなあと思うわ(笑)。
‥‥きれいですよね。
日笠 え?
糸井 きれい‥‥というのとはちがうか。
じゃ、純‥‥?
日笠 ‥‥でもないけど、なんかまあ‥‥
糸井 少年?
日笠 “かわいいタヌキ”ですよ。
タヌキっていうか、かわいい生き物。
かわいい生き物だと思いますね。
糸井 あ、そうですか。
きっと僕より深いところで
見てるんだと思うけど‥‥
日笠 いやいや(笑)。
 
糸井 僕は改めてこのあいだ、
細野さんの若いときの映像を見て。
活動としては一番野心的な時代に
こんな感じだったのかって思ったら、
この人は天からもらった運命の中に、
ただ泳いでた人なんだなと思って、
素晴らしいなと思ったの。
日笠 マリンバなんて叩きながらね(笑)。
糸井 そうそうそうそうそう。
どこかで練習したわけだよね?
マリンバだって。
日笠 いや、違うのよ。
糸井 え?
日笠 あの人天才だから、
マリンバでもスティールドラムでも
新しい楽器を持ってくるでしょ、
世界中の珍しいもの。
2、3分触ってると、
もう演奏できちゃうんですよ。
5分与えればレコーディングできちゃうの。
どんなものでも、カヤグンでも何でも
自分流の演奏ができちゃうから、
マリンバも練習してないです。
糸井 俺は、これはこれなりに練習したんだと思って、
すごいなあと思っちゃった。
日笠 いや、しないんですよ。できちゃうの。
糸井 本当に生まれたときから
泳げる人みたいなものだね。
日笠 そう。
糸井 はあ‥‥。それが、
でも、表れてますよ。
その、何ていうんだろ‥‥
「きれいな」って僕が言いたくなっちゃうのは
そのへんで、
カリカリしてる必要がないんですよね、あの人は。
日笠 お腹がすくとカリカリしますけどね。
根っから丸くてっていうんじゃないんだけど、
例えば‥‥だからやっぱり
動物に近いんだと思いますよ。
動物っていうか‥‥
糸井 横尾(忠則)さんとかに近いのかな。
日笠 あ、近い。横尾さんもサル‥‥
サル系の方じゃないですか。動物ですよね、
お腹すくと怒るし。
で、得意なことはすごく得意だけど、
あとは面倒臭がり屋で、でも憎めない。
だから、そうですね。近いですね。
糸井 そばにいたら面倒臭いだろうし、
毎日は会いたくないしね。
だれでも自分の中に横尾さんやら細野さんが
いるってところあるけどもさ、
あの青春時代のDVDを見てね、
「あ、全然違うんだ」と思ってさ(笑)。
「全然違うんだ。すいませんでした。
 本当にまったく違うわ」と思った(笑)。
日笠 うん、カッコよさに対する概念みたいなのが
多分少し違うんですよね。
糸井 見事ですよねえ。
日笠 うん、あれは見事なものですね。
糸井 そのマネジャーだったんですよね。
世話をやく仕事だったんですね。
(うらやましそうに)そうかー。
日笠 (笑)糸井さんはひとりで
何でもちゃんとできる、
手のかからない、
社会性のある人ですよ。
糸井 いや。それは我慢してやってるわけです。
したくないです。
僕も細野さんになりたいと
ずっと思って生きてます。
日笠 へぇー!
糸井 だけど‥‥ダメですね。
ダメですねって、そう思われたことが
ないんでしょうね。
日笠 だから、それは人それぞれ性分っていうか、
ほら、お母さんっていうか、
気がついたら何か言ってあげるとか、
してあげちゃうとか、
それはもう役回りなんですよ。
気質。
だから、猟犬だったりとか牧羊犬だったり
犬にそれぞれ種類があるでしょう。
糸井 でも、憧れるよね。
何でも世話焼かれるって。
 
日笠 でも、悩みはあるんですよ、あの人にも。
糸井 そういうのもあるよね。
いや、そうだろうとは思うけどね、
僕、悩みを持っているのはイヤだから
解決したいっていうか、
問題解決型なのよね。
日笠 だって人のことをすごくわかるじゃないですか。
こうすればいいな、ピッて。
糸井 うん、解決したくなるんですよね。
でも、それはねえ‥‥それはそれで、
まんざらいいことばっかりとも言えないよね。
日笠 糸井さんは、例えばコピーライターのときも
そうだったけど、
世界を客観的に俯瞰的に見て、
あとは何でも面白がれるじゃないですか。
糸井 そうかー。
日笠 ね。何でも面白がれて、
何でも遊びにする力があって、
それを意地悪な気持ちとか難しい気持ちじゃなく、
社会を「うーん?」って楽しみながら
客観的に俯瞰的に見てて、
「あ、こことここ結んだらこうだ」とか
「あ、これはこうだ。今流れはこうだし、
 あ、これはこうだな」って
的絞ってピッていうことが。
その才能が天から与えられているから、
そういうお仕事もできてきたし、
今もいろんなことができるし、
ひとりずつの人に的確なアドバイスが
できるわけじゃないですか。
糸井 それはだってもう、マーコが言った、
木が倒れててそこから何かを見るのと
同じことですからね。
日笠 うん。だから、木が倒れてるって
いち早く発見できる人ですよ。
糸井 ああ‥‥
日笠 で、「あの木をこうすればいいんじゃないか。
この人はこうだ。これはどうだ」ってことも
同時にわかっちゃうタイプ。
糸井 で、年取ってから、倒れたまんまっていうのが
アリだとかね、わかるようになると
また選択肢が増える。
「結局、僕は何も1年しなかったな」と言っても、
「しなかっただけじゃないんだよ」
みたいなことを言えるようになったですね。
日笠 うん。してることっていうのは
すごくやっぱりみんな多いわけで、
別に肩書きでその職業とかってだけじゃなくて、
本当に微笑みがきれいな人っていうのは、
ただ何もしなくて笑ってるだけで、
「ああ、この微笑みステキ」
と思って人を温めてるかもわかんないし、
例えばその人が入っていくと
会議中ピリピリしてても場が和むとか、
無自覚の役割っていうのも
やっぱりあると思うんですよね。
だから、その無自覚な役割、お役目というか。
糸井 うん‥‥。細野さんがいいなあ。
細野さん、本当になんか、いいなあ。
日笠 なりたいですか。
糸井 ‥‥改めて聞かれると(笑)。
例えば、永ちゃんになりたいですかって、
まずなりたくないですよね。
大変だし、一般的にああいうガキ大将系の
強い子型の人にはなりたくないなって。
日笠 ああ、それはそうですね。
それはなりたくない。大変だもん。
 
(つづきます。)
2007-04-11-WED
Illustrated by 酒井うらら