2024-07-27

・『鞄のなか』

その男はいつでも鞄を抱えていた。それはそれは大事そうで、そのなかに何が入っているのか、誰も知らなかった。もしかしたらその男自身さえも。しかし、あるときに鞄のなかのことがわかった。鞄のなかにあったものは、すべて、その男のものではなかった。どうしてそうなったのか、男にもわからなかった。

・『夜の先』

夜の先には朝があるものだと、信じてはいけない。夜のおしまいというものがあって、それをたしかめてから、おもむろに朝がやってくるのだ。夜のおしまいと、朝の出現のすきまに、ことばのないものたちが、世界を支配する時間がある。泣いたり笑ったり怒ったり諦めたり、ことばのないものたちの、大活躍があるのだけれど、それはあんまりあなたに影響しない。安心してください。

・『ぼくは嘘をつけない』

嘘をついたら、縦に真っ二つに裂けてしまう。そういう特殊な身体に生まれついた。それは祖先から綿々と受け継いできた悲劇だ。嘘をついたら真っ二つに裂けてしまうのだ。縦に。

・『はるか』

遥か彼方、海の波の向こうの向こうにカエルがいる。なにかとてもいい知らせを口にくわえているのだ。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。遊ばせてもらいました。オリンピック記念ということにして。

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