[糸井]
(笑)
[三谷]
サザエさん一家みたいなもんで。
[糸井]
そうですね。まったくそうですね。
[三谷]
家は何度も引っ越すけど、ぜんぜん何も学ばないんですよ、あの人たち。
[糸井]
(笑)
[三谷]
でも、そういう人たちが主役だからこそ、こう、俯瞰で描くことができたっていう。
ただ、それで「8時間もつか」っていうのは、不安は不安だったんですけど。
[糸井]
いや、「それでもつか」っていうのは、たぶん、三谷さんの中には、
「もたせるぞ」っていう確信なり決意があったんだとオレは思うんですよ。
だって、そうじゃないとはじめられないから。
たとえば、あの一家の経済状況って極端な幅がありますよね。
一時期は大金持ちで、それがぜんぶなくなって、運動会の応援に行けないくらい貧乏になる。
あの人たちがそれをちょっとでも恨んだら、それこそドラマが「もたない」わけだから。
だからこそ、あの家族は成長しない、平熱の一家なんですよ。
[三谷]
うーん、そうですね。
そういう意味ではこのドラマはじつは『フォレスト・ガンプ』と同じ構造なんですよね。
[糸井]
ああー、そうかそうか(笑)。
[三谷]
歴史や社会に動じない家族が真ん中にいるから成立するという。
[糸井]
でも、なんていうんでしょう、それがやっぱりふつうの家族なのかもしれない。
戦争が起ころうと、終わろうと、今日の晩ご飯はどうしようかね、っていう。
[三谷]
そうですね。
[糸井]
あの、こんなところに急に持ち出してくる名前じゃないかもしれませんけど、吉本隆明さんっていう人と話をしていると、
「明日のことしか考えない ふつうの人生が100点なんだ」
っていう言い方をされるんです。
それを100点とすると、マルクスとか、そういう、いわゆる特別な偉い人は0点だと。
だから、そういう意味では、あのサザエさん的な家族は100点満点なのかもしれません。
(つづきます)
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