[重岡]
うーん、そうですか。

[糸井]
妥協って、まず高い理想があってのものですから。
だから、なんていうか、いつも身の丈に合ったビジョンしか持ってないからがんばればなんとかそこに届くというか。
それで妥協せずにすんでるんじゃないでしょうか。
たとえば、いま、こうやって座ってる、このベニヤ板っぽいセットだって、
「こういう風に組んでやろうぜ」ってぼくが思ってこうなってるわけじゃないんです。
だから、「こうじゃないんだよな」って妥協しなくてすむんですよ。



[三谷]
ん? それはどういうことですか?

[糸井]
ほら、この、しつらえた、これが。
(座ってるセットをバンバン叩く)

[三谷]
すいません、これって、いつもあるわけじゃないんですか?

[糸井]
ないです、ないです(笑)。
だって、ここ、会社ですから。

[三谷]
会社なのに、なんで、こんなものができてるんですか。



[一同]
(笑)

[糸井]
だから、つくりたい人がいたんですよ。
うちの会社の、社員のなかに。
三谷さんが来るぞ、というときに。

[三谷]
そうなんだ。

[糸井]
たぶん、いちおう、テーマとしては、ドラマのセットの裏側ってことになってるんじゃないかなぁ。

[三谷]
あぁ、そうなのか。
それでなんかちょっと、ものが置いてあったり、ベニヤ板だったりっていう。

[糸井]
うん。そういうふうにしたいなぁってうちの誰かが思ったんでしょう。
で、もしも仮に、先に高いビジョンがあってね、理想に基づいた仕様書を書いて、
「セットの裏側っていうシチュエーションで 三谷さんと話すから、がんばれよ!」
って言って、部長印、課長印みたいなの押して、しかるべき業者がこれをつくってたら、
「そうじゃなくて、もっとさぁ!」
ってなったりもするんだろうけど、なにせ、勝手にやってることですから。

[一同]
(笑)

[三谷]
はぁはぁ、なるほど、そうですね。

[重岡]
ああ、そういうことなんですね。



[糸井]
そういうことなんですよ、うん。
だから、ぼくが「妥協してない」というのは、いわゆる完璧主義のそれと違って、もっとこう、適当なものなんです。

[重岡]
逆にいうと、こういうシステムでやってらっしゃるということは、それは妥協するのが嫌いだっていう‥‥。

[糸井]
そうです。

[三谷]
うん。そうなりますね。

[糸井]
あのー、なんていうんだろう。
えばりたくはないんだけど、上司がいるのもいやなんですよ。

[重岡]
はい、ええ、ええ。

[糸井]
だから、えばらずに、自分で「それでいいよ」っていえることばっかりにしたくて。
だから、なんていうのかな、ちっちゃいお城であろうが、すぐに崩れちゃう砂のお城であろうが、
「自分で決めた」っていう状態を作っておけば、気持ち的には健全でいられますよね。



[重岡]
ああ。

[三谷]
ふーん。
(つづきます)


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