title


[糸井]
なるほど、なるほど。

[田口]
ピッチャーというのは、ちゃんとコーナーを狙って配球を組み立てて投げてくるんだっていう思いが頭の片隅にあるわけです。
だから、カウントを悪くして、相手のピッチャーがどうしようもなくなってど真ん中に投げてくる場合は、打てるんです。

[糸井]
ああ、そうか、そうか(笑)。

[田口]
たとえば、満塁で、カウントワンスリーで、開き直って真ん中にストレートを投げてくる。
これは、打てるんです。
こっちも想定してますから。
ところが、ツーワンくらいのカウントから、ど真ん中にまっすぐをスーーッと投げられると、不思議な感覚におちいるんですよ。
ボールがこっちに来るんです。
来るんですけど、それがすごく長く感じる。
なんというか、ボールをこう、見ながら‥‥。

[糸井]
「そんなはずはない」と思うんだ。

[田口]
そうです。「‥‥なにこれ?」って思うんです。
「なにこれ? 打てる、打てる。打てる。
 打てる。打てるけれども‥‥」って、バットを振りはじめながら、
「これは、引っ張ったらいいのか、 流したらいいのか、どっちやねん、 どっちやねん、どっちやねん‥‥」
っていう状況が生まれてくるんですね。



[糸井]
はぁーー、ずっと決めかねてるんだ。
たぶん、筋肉の動きも最適じゃないんでしょうね。
思考が迷うと、余計な筋肉も動いてしまって。

[田口]
はい。もう、ダメですね、そうなると。

[糸井]
はぁ‥‥。それはきっと本人にしかわからない感覚なんでしょうね(笑)。

[田口]
どうなんですかね。

[糸井]
逆に、予想どおりの球が来た場合には、もう、打ったあとの気持ちのいい瞬間を想像できているんでしょうね。

[田口]
そうです、そうです。
もうちゃんと軌道とかまで描いてるんで、そこに乗っけるだけ、というか。
はい、来ました、来ました。
ここ来たら、こうやって打ちましょう、と。

[糸井]
画で見える、みたいなことですね。

[田口]
はい。
そういうときはだいたいヒットになります。

[糸井]
おもしろいなー。
(続きます)
前へ 次へ
目次へ    
友だちに教える
感想を送る
ほぼ日のTOPへ