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あれって、じつは、それを狙う人が多いというか、
「くじを引きに行ってる人の数が多い」
っていうことでもあるんですね。

[田口]
そうだと思います。
おそらく、9人が9人、頭のどこかには、必ずあると思うんですよ。

[糸井]
「オレのホームランで決めたい」という思いが。

[田口]
はい。狙うわけじゃなくても、頭にはある。
それをおさえて塁に出ようとするのか、あるいは、そのまま狙っちゃうのか。
もしくは、塁に出ようとした結果ホームランになるのか。
そういういろんなパターンがありますけど、必ず、打者が9人並んだら、頭の隅っこには、
「俺、ヒーローになれるかも」っていうのがあるんですよ、きっと。

[糸井]
はーー、説得力あるなぁ。
だから、延長戦って、どういうわけか打線が急に淡泊になってすいすい進んでいくことがありますよね。
あれって、じつは、バッターのほうがそうしむけているということでもあるんですね。

[田口]
そうです、そうです。

[糸井]
同じピッチャーがずっと投げてて、疲れてるし、見慣れてるようにも思えるけど、バッターが「牛耳られやすい」ような状態でバッターボックスに立ってるんだ。

[田口]
そうなんです。
なかなか決まらない延長戦というのは、そういうパターンにはまっていることが多いですね。

[糸井]
ああ、そうか、そうか。
じゃあ、そういうときに、
「本当に全員が一丸となって つないで1点をとりにいく」
ような野球ができるチームがあったらそうとう強いんですね。

[田口]
強いでしょうね。
もちろん、監督は口を酸っぱくして
「つないで1点とるぞ!」って言うんです。
で、ぼくら選手も「塁に出るぞ!」って思うんです。
でも、やっぱり、まあ、心全体が100だとしたら、1とか2くらいは
「ホームラン打てる可能性もあるんじゃない?」っていう悪魔の囁きみたいなものを聞いちゃってるんですね。

[糸井]
そういうこともあって、さっきの
「カミサマ、初球だけ狙わせてください」
っていうことになるんですね(笑)。
でもさ、そういうのがまったくなかったら、つまんないよね。

[田口]
うん、そうだと思います。
それが、野球のおもしろさ。
試合のおもしろさかなって、思いますね。

[糸井]
その葛藤みたいなのがあってこそ、終わったあとでこうやってしゃべれるんですもんね。
はーー、おもしろいわぁ。



[田口]
(笑)
(続きます)
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