第6回 眠りのグルメ?まちがいです。
[糸井]
「こんなふうに短時間でいい眠りが得られると 働ける、出世できる」という発想の人たちと、
「あなたいままでいい眠りを得てなかったけども、 これを読めば得られるぞ」という、薬を差し出すような本は、いくらでも出てるんですけど、眠りという悩みから解放される方向で話ができたら、やっぱり、それは一番いいと思ったんです。
[井上]
そうですね。
結局、そこが一番食い違いでしてね、そこに、そういう考え方をしないために、ますます、悩みを深くして、結局、寝ようと思えば思うほど、眠れないというのが現代の問題なんですね。
「眠ろうと思う」ということは、大脳が活動してるということでしょう。
緊張を高めてるということでしょう。
それは覚醒信号なんですね。
寝るほうにいかないんです。
そうすると、ますます起きている。
[糸井]
そうか、そうか。
[井上]
眠りのグルメを追求しようなんていうのはね、そもそも前提から間違いなんですね。
眠りを気にしない、眠りは、眠りの脳に任せておくというような、今日は、どういう眠りがやってくれるか眠りをコントロールする脳の方が、いわば優位なんだと。
だいたい、人間なんていうのは、浅はかな生き物で、新製品の方がいいと思ってるでしょ。
ですから、大脳なんて巨大になっちゃったからと言っていばってる。
他の動物より、大きな大脳を持ってて、そこで、いろいろ高等なことをやってるから、高等動物、万物の霊長だと。
新製品というのは、性能は高いしいろんなことやれるけども、結果として壊れやすいものですね。
うまく、管理しないと、ちゃんと働かない、それをちゃんと管理してくれる性能が、睡眠であり、覚醒であるの切り替わるそういうメカニズムなんですね。
[糸井]
自分の中に抱えたお天気みたいなものですね。
雨を止ませろと言っても無理なんですね。
[井上]
そうです。
それに従わないで、そっちの、性能のいい機械、つまり大脳を使って究極の生産性を上げようなんてこと自体が、もうこれは生き物の進化の流れを否定してるようなものです。
ちょっとオーバーな言い方ですけどね。
(つづきます。)
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