「戦争の歌」がつなぐ 昭和と現在

行くところまで行かねばやまぬ人間のこの戦を我れは見守る
(矢代東村)

今も続くウクライナ戦争を詠った歌?
そう思いますが、ちがうのです。
太平洋戦争への疑問を呈した歌として『昭和萬葉集』に掲載された一首です。
現代の歌として読んでもまったく違和感がありません。

戦争の時代、
「死」が身近にあった時代に詠まれた昭和の歌は痛切で、そのまま歴史の証言となっています。
ノンフィクション作家の梯久美子さんは 万葉集講座第9回で、この『昭和萬葉集』を取り上げてくださいました。

ひきよせて寄り添ふごとく刺ししかば声も立てなくくづほれて伏す
(宮柊二)

国の為重きつとめを果たし得で矢弾尽き果て散るぞ悲しき
(栗林忠道)

こうした歌は、どのような状況下で詠まれたか。
作者はどのような運命を辿ったのか。
梯さんが悼むように語ります。

そして今また、ロシアによるウクライナ侵攻で、私たちの日常に戦争が影を落とすなか、歌が生まれます。

明日明後日明々後日分のワイシャツを畳みつつ聞くウクライナの歌を
(門間和音さん)

平時なら知ることもなきままの都市指にて辿るウクライナ地図
(吉富憲治さん)

今年の4月と5月に詠まれた歌です。
「朝日歌壇ライブラリ」という検索エンジンに
「ウクライナ戦争」と打ち込むとこれらの歌がみつかります。

いろんなキーワードを入れてみると、今の気持ちに寄り添う一首がみつかるかもしれません。

2022/10/19 11:02

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