終戦の日に松岡和子さん

8月15日、終戦の日に翻訳家・松岡和子さんのお話がほぼ日の學校アプリで配信になるのは、偶然ではないような気がします。

配信になったのは、去年、松岡さんが日本人としては3人目、日本女性としては初めてシェイクスピアの37戯曲すべてを個人で完訳した記念の講演です。

大変な偉業ながら、松岡さんのお話は軽やかで楽しくて、笑顔にあふれたやさしいものです。
でも、前段として俳優の内田健司さんが紹介してくださる松岡さんの人生のはじまりには戦争が大きな影を落としていました。

松岡さんが生まれたのは、日米開戦の翌年の1942年。
生まれた場所は、旧満州の新京(現在の長春)でした。
終戦のとき、お父様は満州国の高官
(司法部と文教部の次長)で、戦後、旧ソ連に11年抑留され、日本に引き揚げた家族はその生死さえ知ることができませんでした。
……とまあ、シェイクスピアが聞いたら戯曲にしたのではないかと思うような苦闘があったわけです。
このくだりもぜひアプリでご覧ください。

さて、松岡さんといえば、ひとつご紹介したいのが、『繪本 シェイクスピア劇場』。
ちくま文庫のシェイクスピア全集とはまた違う絵で、安野光雅さんがさまざまな作品の名場面を描いています。
それに松岡和子さんが物語の説明をつけた贅沢な一冊です。

残念ながら本は品切れのようですが、古本なら手に入るかもしれません。
9月に彩の国さいたま芸術劇場で再演される「ヘンリー八世」のページもあります。
観劇の予習にもピッタリです。

2022/08/15 11:10

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