思い出の金歯

私たちが2006年に出版した吉本ばななさん著の『ベリーショーツ』をグラフィック社発行の
デザインのひきだし」最新刊にとりあげていただきました。

なぜ16年も前の本が掲載されたのか。
じつは『ベリーショーツ』は、とても‥‥とても、画期的な本だったからです。
今回の「デザインのひきだし」のテーマである箔押し加工ひとつとっても、ちょっとありえないようなことをしています。
『ベリーショーツ』のブックデザインは、もちろん祖父江慎さんです。

と私はこのとき、祖父江さんと本をつくるのがはじめてだったので、もう、スイングを振り切ってしまっています。
ばななさんもあきれていらっしゃいました。
きっとこんなことは、もうできないでしょう。
いい思い出です。

特に「デザインのひきだし」に載った
「歯」という字の箔押し加工については、私は泣いても泣いても涙も出ないほどの思い出があります。
だいたい、本文中の1文字だけを金にするなんて、まずふつうはやらない加工なんですよ。
いまでも凸版印刷の藤井さんと顔を合わせると
「あのときの歯が、ですねぇ」
「ううう、ううう」
と互いに話題にのぼらせては唸る、ということをやってしまいます。

この歯が金色なのは、もちろん、金歯にかけているからです。

みなさま、本屋さんで
「デザインのひきだし46」に出会ったら、ぜひ見てみてください!

2022/06/09 17:54

前へ 次へ
日付を指定して見る
感想を送る
友だちに教える
ほぼ日のTOPへ戻る