紙の本という文化

ポートビルではじまったフェニックスブックスフェア、初日の本日夕方、
「出版の『文化』を未来に手渡す」
と題して、最初のトークがありました。
登壇くださったのは、橋本治さんの『人工島戦記』を出版したホーム社の文芸図書編集部出版統括プロデューサー
増子信一さん。
お互いに編集者として駆け出しの頃からかれこれ40年来の仲間というを相手に、出版のこれまでとこれからを語り合ってくださいました。

スター作家たちが交代で編集長を務めた
「面白半分」や、村上春樹さんも参画した
「ハッピーエンド通信」といった1970年代から80年代の伝説の雑誌の話から、
「会いたい人に会おう」と大物作家たちに面会を申し込み、「いい度胸してるな」
と言われた新人編集者の頃の話など、当時の雑誌の勢いを感じる逸話や、当時から橋本治さんという才能がどれほど注目を集めたか、など興味深いエピソードが次々と飛び出しました。

感銘を受けたのは、『人工島戦記』という破格の本を出版するにあたって、デジタル技術などまだどこにもなくて、手書き原稿を手打ちして、活字を組んできた時代から本の世界で生きてきた増子さんの昔ながらの知識と経験が少なからぬ役割を果たしたこと。

そして今また、加賀乙彦氏の長編小説全集を紙の形で残したいという
「作家の悲願」を叶えるべく、作品社から全18巻の全集を刊行中という増子さんのお話から、紙の本という「文化」を死守し、次の世代に伝えていくのだという強い意思を感じました。

こうしたお話に触れてから紙の本を見ると、愛おしさが倍増します。

が書いていたとおり、
明日は3つのトークを予定しています。
ご都合の良いときにお話を聞きがてら、ポートビルに遊びに来てください。

2021/10/29 21:00

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